書くしかできない

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「統合失調症の一族」ロバート・コルカー著

 1970年代のアメリカに実在した家族、ギャルソン家のお話です。なんと、12人も子供がいて、その半分が精神疾患者でした。当時は「統合失調症」と診断されましたが、発達障害だったかもしれないと、本著では書かれています。

 精神疾患は、遺伝なのか。環境なのか。研究者にとって、共通の遺伝子を持つ12人のうち、半数が発症しているというこの家族は、格好の研究対象になりました。

 この本では、ギャルソン家の父母、更に祖父母、そして12人の子供達全員一人一人が、丁寧に描かれています。

 そもそも何故、母親ミミは、12人も子供を産んだのか。

 ざっくりした答えを言うなら、両親に認められる事がなかったミミが、純粋に自分だけを求めてくれる子供を沢山持ちたかった、という事のようです。夫ドンは仕事で家をあける事が多かったのも一因のようです。にしても12人は多すぎる。とても育てられないと普通の人なら分かるところが、ミミには分からなかった。これだけでも、ミミが何らかの特性を持っていたことが察せられます。

  後に、研究者により、子供達の精神疾患の特性は、母親ミミからの遺伝である事が分かります。

 この本には、多くの研究者が出てきますが、中心はリン・デリシと、ロバート・フリードマンでしょう。

 精神疾患を発症する人は、生まれつきに脳に脆弱性を持っていてこれは遺伝である。同時に、脳に脆弱性があっても、生きる環境に恵まれていれば発症しないが、環境が厳しいと発症する。そういう事が徐々に分かってきました。

 リンは、この疾患が、SHANK2遺伝子の異常である事を突き止めました。フリードマンは、母親が妊娠中に、コリンを多く摂る事で、胎児に対する精神疾患の遺伝子異常を防ぐ効果があることを、証明しました。

 とはいえ、今現在もなお、精神疾遺伝子の患常の胎児検査は、存在しません。これは今後の研究に期待するしかありません。

 

 この本は、発売されるや否や、米国の各メディアの年間ベストブックを総なめしたそうです。研究内容の面白さもさることながら、精神疾患者6人を含む、家族14人の記述が、興味深い。家族に1人でも統合失調症者がいると大変なのに、6人もいるのです。母親はどうやって子育てしたのか。健常者だった残りの6人はどうやって成長したのか。

 かなりみっちり書き込んであるので、読むのも大変ですが、面白かったのでご紹介しました。宜しければぜひ。

 ちなみに、ギャルソン家の家族はまだ生きておられます。孫の1人は精神医学を専攻し、フリードマンの研究室で精神疾患の研究を始めたそうです。アメリカの懐の深さを感じます。