書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

ハルカス美術館、ムーミン展に行って来ました。

 ここ数日、大阪も感染者数が急激に増え、いつ何時、ハルカスも閉鎖になるかもしれないので、行ける時に行っておこうと、ハルカス美術館のムーミン展に行って来ました。とはいえ、人が多少いたら入らずに帰ろうと覚悟して、ハルカス16階に出向きました。幸い、朝いちで行ったのが良かったのか、意外にもほとんど人はいませんでした。

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 もうすでに慣れてしまった感のある体温測定とアルコール消毒を経て、会場内へ。会場内は、基本的には作者トーベの原画が壁に並んでいるだけなのですが、あれこれ洒落た工夫があってとっても楽しい。ムーミン一家が住んだ大きな灯台とか、作者トーベの島の家とか。本当は、ゆっくり味わって見たかったのですが、空いているとはいえ換気のない屋内。感染しないとは限りませんから、入り口から出口まで、マスクを二重にしてさ~っと駆け抜けました。売店で買い物した時間もいれて、15分。入場料は大人一人1500円ですから、1分100円の計算になります(涙)。そうまでして見たかったのかと言われたら、見たかったのです、、。ゆっくり見れば2時間はいられそうな充実した展示内容だったのに、、、ああ残念。

 私の小さい頃、「ムーミン」は毎週テレビでやっていて、それで好きになりました。ほんわかしているのかと思いきや、意外とシビアで独特の世界観に、はまる女性も多いようで、私が会場を後にする頃には、すでに入り口前に列ができ始めていました、、。会場内が混まないように、入場制限もかかっているのでしょう。

 行こうと考えておられる方は、口コミ等を参考にされて、人の少ない時間帯を狙って下さい。とりあえず、私の場合、平日朝いちで行ったら空いてました。でも、15分後には列ができ始めていたという事は、中も混み始めているという事なので、ゆっくりは観られないと覚悟して(涙)、、。というか、もうこのご時世、行かないほうがいいんでしょうね。。 

 いつもの通り、売店では、大量におみやげを購入。綺麗な刺繍入りのミニタオルが600円、黄色のエコバックが4000円だったかな。エコバックだけ妙に高かったです。本はいろんな種類があって、とりあえず2種類買ってみました。左端はムーミン展の図録。

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↑このマグカップも購入品。家に帰って早速愛用しています。フィンランド語なので、何が書いてあるのかちょっと分からない(笑)。大きくて軽くて使いやすいです。

 

 展覧会場ではゆっくりできなかったので、今回のムーミン展の図録も売店で購入しました。展覧会場で展示してある原画や説明書きは全て載っていて、更に、詳しいムーミン辞典的な内容になっていました。これで2400円は安い!

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内容少しだけ。これはムーミン屋敷。現在はフィンランドムーミン美術館に飾られているそうです。

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この図録、本当に素晴らしくて、ムーミンファンの私は、もう舐めるように読みました。写真も一杯あって、最高。

 

 今回、この図録を熟読して、初めて知った事が多かったです。

 まず、ムーミンの本は、9作しか出版されていないという事。あんなに有名なシリーズなのに、たった9作だったとは。しかも、ハリーポッター等と違い、ムーミンの本は一作のボリュームが薄いです。

 また、ムーミンは、第二次世界大戦の頃に書かれた、という事。フィンランド本土も戦場になりました。作者トーベの父も、兄達も戦争に行ったそうです。食糧難に苦しみ、空襲に怯える日々の中で、トーベは一種の逃避として、ムーミンを生み出したのだそうです。現実の苦難や恐怖から逃れるために、ムーミン小説の第一作となる「小さなトロールと大きな洪水」は執筆が開始されたのです。

 ムーミン小説は、フィンランドスウェーデン、イギリスと売れていき、戦争が終結する1944年直前に、トーベは自分の念願のアトリエをやっと手に入れたそうです。それは、ヘルシンキ市内の建物の最上階にあり、天井が高く「塔のような」部屋で、窓からはヘルシンキ港の風景が望めたのだそうです。

 また同時に、トーベは、フィンランド南部の沖合に浮かぶ孤島クルーヴ島に、小さな小屋を建てます。この島は電気も水も来ていません。岩だらけの島に、一部屋だけの小さな小屋を、トーベは、パートナー(女性)や二人の漁師の助けを借りて、建てたのだそうです。この小屋には、四方に窓を作ったのだそう。それはトーベが近づいてくる嵐や海に映る月明かりを見たかったからだそうです。図録に小屋や島の写真が載っていますが、とても小さい島、とても小さい小屋。彼女はそこで、とても幸せそうに写っています。

 私も、そんな小屋に住みたいなあと、漠然と思ってしまいました。きっと不便な事は多いでしょうが。小さな小屋で、東から朝陽がのぼるのを見て、西から夕陽が沈むのを見る。小屋の前に座って、日がな一日、海を眺めながら絵を描き工作をする。

 トーベという人は、決して美しい女性ではないし、不幸な時代に生まれています。でも、自分がやりたいと思う事をやり抜き、自分の希望通りの人生を送った人なのだろうと思います。

 どうして彼女が、そんな人生を送れたのか、その秘密は全て、ムーミン小説に書いてあると私は思います。 

 ムーミン小説の魅力というのは、「おかしな人が出てきて、おかしなことを考え、おかしなことをする」ところにあります。おかしいんだけれども、いちいち「ああ、分かる、分かる」と共感してしまう。悲しさの中にユーモアがあり、楽しさの中にペーソスがある。おかしな子と言われる人達の心のひだに、寄り添うような文章の数々に、惹き付けられてしまうのです。

 トーベが戦時中にムーミンを生み出したという事が、私には驚きでした。そうであるならば、今このコロナとの戦争の最中にも、つらい苦しいというだけでなく、何かしら楽しい世界を生み出す事は、可能なのかもしれません。

 

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