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「世にも危険な医療の世界史」リディア・ケイン他著(少し追加)

 

世にも危険な医療の世界史

世にも危険な医療の世界史

 

  この本は怖いです。

 過去の世界史の中で、「治療」として行われていた医療の数々が書かれているのですが、なぜ怖いかというと、その時代では、当たり前の常識の治療が、今では「あり得ない」治療であるからです。この事を本を読み進めながら改めて確認する作業は、背筋がぞっとする経験でした。

 たとえば、薬品では、「ヒ素」「アンチモン」「水銀」「金」「ラジウム放射性物質)」「アヘン」「ストリキニーネ」等が、素晴らしい良薬として治療に用いられている時代があったそうです。当然、これらを体内に入れた人は苦しんで死ぬのですが、その死は病気のせいだと片づけられ、なんなら「もっと早く服用していれば助かったのに」または「もっと大量に服用すれば助かったのに」と言われていたと、、。

 また、治療法としては、「静脈を切って血液を大量に体外に出す」事で、病気が治ると考えられていた時代がとても長かったそうです。一度に2リットルも血を抜き、病気が治るまで何度も抜き続けるのだそうです。モーツァルトも、かの詩人バイロンもこの治療で命を落としました。また、「皮膚を強火で焼く」事。「浣腸」「冷水をかけ続ける」「不潔な状況での外科手術」なども、長い間治療として行われていたそうです。治療のせいで亡くなった人が多かったのに、やはりこれも、亡くなった原因は病気のせいとされ、もっと早く治療していれば、もっと繰り返し治療していれば、助かったのにと言われていたとか。

 私がここに書いたのは「怖い医療」のほんの一部です。興味のある方は、どうぞご一読下さい。

 この本を読んで、本当に強く思ったのは、「自分の感覚として『これはおかしい』と思う事は、やめたほうがいいのだ」という事です。

 これは、医療に関わらず、どんな事においても。今の時代の常識が、真実正しいとは限らない。未来から見たら「とんでもない怖い事」が、今の時代の常識になっている可能性はゼロではないと思います。

 だからこそ、自分の頭できちんと考えること、おかしいと感じたら、しっかりNOを言う事が大事だなと思いました。

 勿論、医療でいえば、正しい治療を専門家の方々が行ってくださっているのに、いちいち文句をつけることは不適切です。そこの見極めは大事。きちんと調べるという事が大事。でも、きちんと調べた上で、それでも「おかしい」と感じたら、しっかりNOを言う事もまた、大事だなと思いました。

 いずれにしても、自分の頭で考える事が、どんな事においても大事なのだという事を、改めて知らされた本でした。ああ怖い。

 

 そう言えば、身内に麻酔科医がいるのですが、彼曰く「医者が患者に『このオペは一般的で簡単なものです』と言うことがよくあるけれど、実際に手術を見ていると、そんな事はとても言えない。どんなオペでも体にメスを入れるという事は、患者さんにとって大きな負担になる」と言っていました。

 麻酔医というのは、手術中ずっとその場にいて手術を見守り続けるのが仕事なわけで、その職務の性質上、執刀医よりもむしろより冷静に正確に手術というものを観察していると言えます。

 その彼が、「体にメスを入れるという事は、どんな簡単なオペであっても、人間の体にとって害にならないわけはない」と言い、「だから、手術を受けないにこした事はない」と言っていました。

 つまり、日常から、手術を受けずに済むように、病気にならないように怪我をしないように、気を付けて過ごすという事が大事なのだと。

 ちょっとぐらいの怪我や病気なら、パパっと手術を受ければ解決、と簡単に思いがちだけれど、手術をしたせいで別の病にかかる事も少なくないと彼は言います。これは、医者の腕にもよるし、患者の体質にもよる。でもリスクは確実にある、と。

 

 そう言えば(話が長くなりますが)、長く不妊治療を受けていた方が、無事にお子さまは授かったのですが、早産になって体も弱く発達も遅れがちで、性質的にも育てにくいお子さで、とても大変な思いをされていた中で、ご自身も婦人科系のガンになられてしまった方がいました。気の毒な事に、そのガンはたちが悪く、転移して乳がんにもなられ、両乳を切除した今も、転移の可能性に怯えておられます。

 不妊治療で使われる一般的な薬を長く服用すると、ガンになりやすい、というのは、医者の間ではよく言われている事だそうです。でもそれを使わないと不妊治療ができないから使っているらしいです。

 こういう話を聞くと、命に関わらないこと(不妊治療や整形など)を行う事は、確かにクオリティーライフを高めるけれど、リスクのほうが大きいんじゃないかと感じます。

 今の時代で行われている最新治療が、先の世で、恐ろしい治療だと言われないとも限りません。気を付けないといけないと改めて思います。