書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

「静かにねえ静かに」本谷有希子著

 

 

静かに、ねぇ、静かに

静かに、ねぇ、静かに

 

  帯には「SNSに頼り、翻弄され、救われる私たちの空騒ぎ」と書いてあります。本谷有希子さんの「静かにねえ静かに」。

 この本は、3つの中編小説から成っています。

 私は特に一つ目の「本当の旅」が、面白かった。

 男2人女1人の3人グループで、マレーシア旅行に行くお話です。何でも「いいね、いいね」と同調し、道中全てをすぐその場でSNSに発信する3人。軽くて純粋っぽくて理屈好きの今時の若者ね(お若い方、失礼)、と思って読んでいると、いやいや中年(40代)の男女3人だという事が途中で分かり、突然ゾッとします。

 そして。読者が、この人達中年なんだ、と気づいたあたりから、小説のムードが一気に変わり、あれよあれよと見る間に毒が溢れてくる。エンディングの後味の悪さは格別で、不安がじわりとこみあげてきます。

 ネットで誰かのブログを読んでいるような文体と内容なので、小説を読んでいる事を忘れます。だから読みやすい。途中までは。途中からは空恐ろしい不気味さで、読むのがつらくなってきます。え、いい年した中年が、こんなレベル?本当に?という。でも同時に心のどこかで、ああでも、そうなのかも、と納得している自分がいました。

 

 こんな風な、ネット文化SNS文化をある種揶揄する小説というのは、世に多く出回っているわけですが、この本は説得力という面で、他とは頭一つ抜きんでていると感じました。この著者の他の本も読んでみたいと思います。