米国テネシー州生まれの著者の、この小説は、奇想天外ながら、あまりにも説得力があり、何より結末の意外さに驚かされました。これは面白い。
(以下ネタバレあります)
主人公のリリアンは、28歳。貧しい生まれながら、努力して奨学金(給付型)を受け、優秀な高校に進学するものの、親友マディソンの麻薬所持の身代わりとなり、退学させられます。マディソンの父親は超がつくほどの資産家で、リリアンの軽率な母親を、買収したんですね。(金払うから、娘を身代わりにしろ)
普通なら、リリアンはマディソンと絶縁すると思いますが、その後も文通という形で、二人の関係は続いていきます。
リリアンは、高校を退学してから運に見放され、スーパーのレジを掛け持ちしつつなんとかかつかつ生計をたてていました。
一方マディソンは副大統領も狙える位置にいる上院議員と結婚し、男の子を一人産みます。ただ、1つ厄介ごとがマディソンを襲いました。夫が前妻との間に作った双子が、燃えるのです。
???
その双子は、気分が高揚したり、怒りを感じたりすると、体から火を放つ体質とのこと。不思議と自分達自身は燃えません。熱くもならない。ただ、体から火がぼうぼうと出て、周囲のものを燃やし尽くしてしまうのです。
夫の前妻が亡くなり、マディソンはこの双子を引き取らざるを得なくなったのです。
図々しいマディソンは、リリアンに「双子の世話をして欲しい」と言ってきたのです。お金はたんまり出すから、と。
リリアンはその話に乗り、双子のお世話係になります。これがもう、、、大変というか、めちゃくちゃというか。ことあるごとに全身から火が出る子供達を、一人で預かり世話するのですから。
とはいえ、この小説の良さは、こういった設定の面白さというより、リリアンの個性にあります。リリアンの描写の1行1行に納得できる、得心がいく、そうだそうだ、と言いたくなる。リリアンはそんな女性なのです。
同時に、マディソンや、その夫に対する嫌悪感。一見良さそうな人達なんです。向上心があり、誠実っぽい。でも一皮むけば、自分の事だけしか考えていない、傲慢さと計算高さ。米国の富裕層にいかにもいそうな人達です。
リリアンと燃える双子たちがどうなっていくのか、知りたくてページをめくる手が止まりません。先に答えを書いてしまうと、リリアンは双子とうまく生活できるようになるのです。本当に大変でしたが。
そこまで頑張ったある日、マディソンの夫が国務長官になる話が持ち上がり、身辺整理を考えた彼は、双子をヨーロッパの寄宿学校に追いやる事に決めました。
え?燃える双子を?無理でしょ。やれないでしょ。っていうかやっとリリアンとの生活に慣れたところなのに。
あろうことか、マディソンですら、その案に賛成し、両親がそう決めたのなら、雇われ世話人のリリアンにはどうする事も出来ません。
国務長官の就任式には、マディソンと夫と生まれたばかりの子供の、3人だけが、出席しました。双子たちは存在しない事として。そして、事件が起こりました。
さすがにこれ以上は書けませんが、面白い。読んで損はない。そして、生きる勇気が湧いてくる本です。ぜひおすすめです。