書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

私の執着

 前回の記事の続きになりますが。

 もう甥っ子と会えないかもと思うと、一抹の寂しさが胸をよぎります。

 赤ちゃんの時から、ちょこちょこ預かっておもりしてきた子なので。少し大きくなったら、幼稚園のお迎えや、お稽古の送り迎えも、姉の代わりによく行きました。その頃から、英語を教え始めましたが、まあ覚えのよい事。教えたはしから覚えていくので、なんという秀才かと思いました。まさに、栴檀は双葉より芳し、を地でいく子でした。

 勉強だけでなく、何にでも幅広く興味を持つ子で、サッカーもやれば柔道もやる。ピアノも弾けばバイオリンも弾く。海外旅行もなんだかんだ、毎年どこかに出かけて行く。友達も多い。本当に多い。

 唯一欠点を挙げるなら、合理的思考が過ぎるというか、私のような年寄りから見れば「考えが浅い」「浅い考えで世の中を見ている」ところがある気がしていました。それでも、とにかく何をやらせても優秀なので、周囲は文句のつけようがなく、彼の浅い考えでの世渡りを、誰も諌める事ができず。浅い考えでも間違いなく結果は出すので、まあいいかと周囲は見てしまう。困った時に助けてやればそれでいいか、と悠長に構えてしまう。でも、彼はまず困らない。あまりの能力の高さで、何もかもうまくこなしてしまうからです。

 一度、彼の妹(私からしたら姪っ子)の事で、彼と話した事があります。私は、彼に、もう少し妹の事を考えてやって、と頼んだのでした。母親(私からしたら姉)が、滅茶苦茶なので。

 彼は、「妹は別に発達障害じゃないし、周囲が助けるから何も出来ない人間になってしまっているだけ。一人で何でもやらせればいい。一人でやらねばならなくなれば、やるから。みんなが過保護に手出し口出しし過ぎ」と言いました。

 当時はまだ、彼は実家に暮らしていたので、毎日一緒に暮らしている妹の事ですから、私より彼のほうがよく分かっているのは間違いなく。そう言われたらそうかもしれない、と、私は手出し口出しするのを控えるようになりました。

 が。

 結果。

 妹(姪っ子)は、発達障害と診断がつき、鬱で不登校になり、私に「死にたい」と電話してくるようになってしまいました。

 あの時の、甥っ子の口調を、私はハッキリ覚えているのですが、いかにも面倒というか、皮肉っぽい口調で、馬鹿に説明するのは疲れる、みたいな口調で、なんならうっすら小馬鹿にしたように笑いながら「妹は過保護にされ過ぎているから、何でも一人でやらせればよくなる」と言い切ったのでした。

 もとから、母親(私の姉)は、子育て放置な人なので、私が口出ししなければ、姪っ子は放置放任で誰にも助けてもらえず、です。甥っ子の言う通り、一人で何でもやらねばならない環境に置かれて、彼女は鬱になりました。

 だから。

 甥っ子は、自分は正しい、周りは馬鹿ばかり、と思って生きているけれども、いつも彼が正しいとは限らないし、世の中にはそんなにスッパリ答えがでる事ばかりではない、という事を、彼は認めずに生きている気がします。

 世の中には合理性だけでは解決できない、曖昧で面倒な事象も沢山あるという事。行ったり来たりを繰り返す事でしか、乗り越えられない山もあるのだという事。そんな事を、彼に言えずに終わってしまったなあと思います。

 そんな事、彼には必要ないのかもしれませんが。

 もう会えないなら寂しいな、と思うのは、私の執着。

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