ずっと読書記録を書いてなかったので、以前に書いたもののリライトを載せます。一度に三冊。
一冊目はコチラ↓。
ざっくりあらすじを書きます。「アメリカで、大統領政策として、強制的に、あらゆる女性から、言葉が奪われた。一日100語以上話すと強力な電流が流れるというブレスレットを、全ての女性がはめさせられる事となった。話す事を禁じられたので、女性は働く事ができない。女性は、口を開かず、家で家事育児のみをし、夫の相手をしていればそれでいい、という政策。家の中でも、同じ子供でも、男児は活発に喋る事を奨励され、女児は黙っている事を強制される。女児は女児だけの学校に通い、ただ教師の話を聞くだけで自分達からは発言しない。話す言葉が一番少なかった子には褒美が出る。
主人公の女性は、もともとは失語症の研究者。政府は、ある研究の為に、主人公に協力を依頼する。政府に協力している間に限りブレスレットを外す許可が下り、主人公は言葉を自由に話す事が出来るようになった。しかし、政府の研究の真の目的は、更に女性達から徹底的に言葉を奪う手段を見つける事だった。それに気づいた主人公は、表面的には政府に協力しつつ、裏をかく方法を模索する」
主人公の女性の夫は、優しく包容力もあるひとかどの人物として描かれているのですが、その夫からして、主人公が政府に協力する条件で再び言葉を自由に話せるようになったら、「以前の(話せない)君のほうが良かった」と、つい口走ってしまう、という場面が印象的でした。
アメリカ人女性は、たしかに、ものすごく喋りますが、、。だから、あの口を塞ぎたい、と男性が考えるのも分かりますが、、。とにかく、皮肉に満ちた見事なディストピア小説で、1ページたりとも退屈さや凡庸さを感じるページはなく、新鮮でありつつ、激しく共感でき、一気読みです。
久々に本当に面白い本でした。
二冊目はコチラ↓。
カッコーの歌 (創元推理文庫) [ フランシス・ハーディング ]
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「カッコーの歌」。フランシス・ハーディングの幻想小説です。舞台は第一次世界大戦が終わった頃のイギリス。
主人公の女の子は11才。9才の妹がいて、著名な建築家の父と、美しい母と共に暮らしています。両親は名士ぶった人達で、階級意識が高く、主人公は学校には行かず家庭教師に勉強を教わっています。その家庭教師も、主人公が少し懐いたところで別の人間に変えられてしまいます。自由奔放でヒステリックな妹とも折り合いがよくありません。
そんな主人公が、ある事故を機に、記憶を失います。幸い、その記憶は、少しづつ戻ってくるのですが、何かがおかしい。破り取られた日記、異常な食欲、耳元でささやく声「あと6日」「あと5日」、、。主人公に何があったのか。そして、家族の秘密とは。
序盤からぐいぐい引き込まれ、読み止める事ができません。すごく面白い。ストーリー展開も秀逸ですが、それ以上に、情景描写の美しさときたら、さすがハーディング。どのページも、まるで目の前に小説世界が出現したようなリアルさで、かつ、心の襞にピッタリと寄り添う的確さと繊細さがあります。
ただ、中盤から一気に幻想世界に入るので、序盤のリアルな描写に惹かれて読み進めた方は、ここで違和感を感じるかも。私は全然大丈夫でしたが。
三冊目↓。
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ジェフリー・アーチャーの「嘘ばっかり」。短編集です。ジェフリー・アーチャーといえば「百万ドルを取り返せ」や「ケインとアベル」等の名作があり、大好きな作家さんですが、しかしながら過去の人だと思っていました。ところがどっこいです。ストーリーテリング健在です。「嘘」をテーマにした短編は、どれも人間観察力、洞察力、どこから持ってくるんだと思ってしまう独特のアイディアが冴え渡り、ただただ面白い。
ジェフリー・アーチャーは変わった経歴の持ち主で、オックスフォードを卒業してすぐに最年少で庶民院議員になり、詐欺にあって全財産を失い、議員も辞職する羽目になったものの、「百万ドルを取り返せ」がミリオンセラーになって借金を全て返し、コールガールを相手にスキャンダルを起こし、それを書いた新聞を相手どった裁判に勝ち、ロンドン市長選に立候補したものの前の裁判の偽証が発覚して実刑判決を受け、服役していた間の経験を書いた「獄中記」がベストセラーになり、今は貴族院議員という人物です。一代貴族になったそうなんですよね。
まあ、こういう著者だからこそ書ける嘘話の数々、読んで損はありません。
外出も躊躇われるほどの暑さが続きますが、そんな日にはエアコンの効いた涼しいお部屋で、アイスコーヒーなど飲みながらページをめくってみるのも一考ではと思います。ではまた~