書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

「かがみの孤城」辻村深月著

 この作者の本は、初めて読みました。何かで紹介されていて、面白そうだなと思ったのです。読んでみたら、評判通り、面白かった。私はわりと一気読みはしないほうなのですが(特に初めて読む著者の本は)、これは読み止める事が難しく、久しぶりに一気読み。深夜というか明け方まで読み続け、翌日は寝不足でフラフラでした(笑)。 

かがみの孤城

かがみの孤城

 

  中学生の女の子が主人公です。彼女は、ある事から不登校になって、一年間学校に行きません。ずっと部屋に引きこもりました。その一年間に、彼女に起こった事が、この小説には書かれています。

 ずっと部屋に引きこもっていたのに、一体何が彼女に起こったのか。

 彼女の部屋の鏡から、彼女は「ある異世界」に出かけていたのです。そこには孤城があり、彼女のような不登校の中学生が6人、いました。

 彼女を入れて7人の不登校の子供達の、心の交流が、この小説の縦の糸となっています。また、その7人がそれぞれ不登校になった理由が、横の糸として語られていきます。そして何より、「この孤城は一体何なのか?どうして存在しているのか?」という謎が、縦の糸と横の糸を紡ぐ折り機の役目を果たしています。

 ここまで読んで下さった方は、きっと、こう思われている事でしょう。

「それって、主人公の夢なんじゃ?」と。

 違うのです。孤城も、そして彼女が出会った6人の不登校生達も、現実と繋がっているのです。小説を読み進むうちに、それがハッキリと分かってきます。驚く事に、7人は、同じ中学に通っていた事まで判明し、彼女達は、ある計画をたてます。

「みんなで一緒に登校しよう。一人じゃなければ、学校にも行けるはず」

 日付を決め、みんなで中学の保健室に集まる事にしたのです。

 主人公の女の子は、当日、勇気を振り絞って登校します。人に会うのが怖い。友達に会ったら逃げ帰ってしまいそう。そういう怖気づく気持ちを抑え、校門をくぐります。

 しかしながら、この計画は、ハッピーエンドにはなりませんでした。何故なのか。

 また、この小説には、少なからず「不登校の保護者達」の様子も描かれています。勝手な親、自分本位な親、子供思いの親、思慮深い親、様々なタイプの親が出てきます。私は親の立場なので、主人公の女の子よりもむしろ、こちらに感情移入してしまいました。大変だけれども諦めず、子供を責める事もなく、自分の不安は表に出さず、ひたすら子供を見守りつつ、一生懸命日々を過ごしている主人公の母親に。

 もちろん、母親だとて人間なので、時々ミスを犯してしまいます。ちらっと不安な顔を見せたり、苛立ってしまったり。主人公の女の子は、そんな風に母親が「ミス」を犯すたびに、果てしなく傷つき、落ち込んでしまうのです。母親も子供も、双方悪くないのに、不幸の連載が続きます。読んでいて切ない部分です。

 物語は後半にかけて佳境を迎えます。孤城は1年で終わる(消える)と決められていたからです。タイムリミットに向けて子供達が様々に考え行動している最中、思いもよらない事件が起こります。子供達は、そこで諦めるのか。諦めないのか。

 最後にはあまりの情報量の多さに、私の頭が混乱しました。それでも、読み終わった時には、全てのつじつまが合い、「ああ、なるほど。こう終わるのか」と納得しました。気持ちのいい得心と共に、ふわりと体が浮いていくような希望が、あたたかく胸に残りました。

 読んで良かったなあ、と素直に思いました。

 ただ、この作者と私とでは、年齢が違い過ぎるのか、100%共感できるには至りませんでした。ところどころで違和感があるというか、表現が大袈裟だと感じたり、登場人物の言動に不自然さを感じたり。心にピッタリくる小説、というところにまでは至らなかったのが残念です。