書くしかできない

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自殺志願者が、他人を巻き込む理由

 先日、66歳の無職男性が母の死に立ち会った44歳の医師を銃殺する、という悲惨な事件がありました。

 何故その男性は、そんな事をしたのか?

 この理由について、神奈川大学の脳心理科学者である杉山崇氏が、以下のように語っておられました。

自死志願者はなぜ善良な医師を巻き込んだのか? | アゴラ 言論プラットフォーム (agora-web.jp)

 

 私的に、かなり納得できたので、勝手ながら、抜粋して引用させて頂きます。

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 容疑者は自死志願を口にしているようです。昨年から相次ぐ巻き込み型自死志願者の事件の一つと見て間違いなさそうです。こんな事件はもう二度と起こってほしくないですね。どうすれば抑止できるのでしょうか。彼らがためらいもせずに他人を犠牲にできるのはなぜなのでしょうか?

 答えはパラノイア感に囚われていたと言うことができます。

 パラノイア感とは「自分が誰かに悪意を向けられ標的にされている」という心理です。いわゆる被害妄想の基になっている心理と思っていただければわかりやすいでしょう。彼等は何故パラノイア感に陥ってしまったのでしょうか。

 絶望に対するリアクションとしては2つです。「自分のせいにして落ち込む」か、「人のせいにして誰かを恨む」かです。

 落ち込むほうを選択すると、「うつ病」というひどく苦しい状態に陥ります。

 筆者はうつ病の研究とカウンセリングを28年行っています。20代の若い頃には毎日うつ病患者と真剣に向き合う中で筆者自身も4年くらい重いうつ病を経験しました。

 うつ病の苦しさは想像を絶するものです。「心の痛み」と私たちは呼んでいますが、安全のモニタリングシステムである大脳辺縁系が刀で刺されたかのような痛みを作り出すのです。

 うつ病患者の多くが消えたいと願うのは、この痛みが永遠に続くかのように感じられることが一因です。

 私たちうつ病を研究課題とする心理学者は大脳辺縁系の活動と心の痛みを緩和するために日々研究を行い、新しい心理療法を開発しています。

 ただ、実は私たちが開発した心理療法よりもっと簡単にこの苦しさを回避できてしまう方法があります。

 この方法こそが、「人のせいにして誰かを恨む」ことです。

 何かのトラブルについて自分のせいだと思っていたら苦しくなり、人のせいにしてしまうと気が楽になる…、あなたも経験がないでしょうか。同じ原理で深い絶望に陥ったとしても、人のせいにしてしまうと気が楽になるのです。

 この状態で発生するのがパラノイア感です。うつ病で気力をなくして食欲も性欲も失うのに対し、パラノイア感に陥ると身を守るために逆に精力的になります。

 そして、その精力は攻撃性になって自分を絶望させた誰かに向かいます。彼らの脳内では自分を絶望させた相手は敵なのです。

 脳は自分を脅かす敵の存在を認識すると迷わずに攻撃システムを発動させます。社会生活を営む私たちの攻撃システムは普段はコントロールされています。しかし、敵を認識すると攻撃システムを開放して身を守るために素早く行動できるようにするのです。

 絶望を誰かのせいにしてパラノイア感に陥っている方はためらわずに人を攻撃できてしまう非常に危険な状態に陥っているのです。そして、人のせいにできる人は、誰でも彼でも些細なきっかけで自分に害を与える敵にしてしまいます。

 実は人の大脳辺縁系は人に痛みを分かち合ってもらえると活動が緩和して気が楽になる…というメカニズムがあります。医師に非はありませんが、この事件では対話のチャンスがあったようなので、心理学者としては展開次第では回避できたかもしれないと考えてしまいます。たとえば、

  • 求めに応じる姿勢を示していたら…
  • 蘇生措置について話し合う中で容疑者の絶望感について少しでも話し合えたら…

何かが違ったかもしれません。

対話のチャンスがあれば活かすことが対策の一つにはなると言えます。

もちろん、残念な結果は変わりませんし、私自身もイザというその時に冷静に対話ができる自信があるわけではないのですが。

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 心の痛みを感じなくするために、人のせいにする。パラノイア感。誰かを敵認定すると攻撃性が開放される。

 ここまでは納得できたのですが。

 敵認定されない為には、相手の痛みに寄り添うべき、というまとめ部分が違和感がありました。無理じゃないだろか。。人のせいにしたがる人間というのは、〇クザのいちゃもんと同じで、こちらがどれほど寄り添っても、なんとかして難癖つける隙を見つけ、攻撃してきます。

 私は、うつレベルにまで心が病んだ人には、軽々しく寄り添ったりせず、病院に連れて行ってあげるか、それほど親しい間柄でなければ、そっと距離を置くべきだと思います。素人がなんとかしようとしたら、悲劇が起こると思います。

 それでも、この記事の、「何故この男性が、医師を殺したか」その理由が分かって、良かったです。そういう脳のメカニズムがあるのだと知れて。

 困った事、不安になる事、うまくいかない事は、人生につきもので、そういう問題が何もないなどという事は、あり得ません。誰しも、何らかの問題を複数抱えながら、生きています。他人のせいにしてしまえばラクだけれど、それは自分の中の攻撃性を開放してしまい、結局自分を破滅させる事になる。

 あまり自分を責め過ぎるのもよくありませんが、自分の人生に起こる事は、何事も自分の問題であると認識し続ける事が、大事だと改めて思います。他人を敵認定して、解決できる問題は、何もないという事です。たとえ、相手が100%悪くても。それでも、敵認定してしまうと、自分の中の攻撃性が開放され、冷静さを失い、状況に適切に対処できなくなってしまうからです。

 こういう傾向が人間の脳のメカニズムに存在するのであれば、この男性が特別だという事はありません。私だって、同じ状況に陥れば、同じような心の状態になり得るわけです。だからこそ、常日頃から自分の心を冷静にチェックし、他人のせいにしていないか、気を付けて生きていきたいと思いました。