物事が起こってから、「私はそれを予測していた」と発言する事を、後付バイアスと言います。
人はどうやら、後付バイアスをしがちだそうです。
今度の大統領の中国訪問は成功するか否か?という質問で、事前アンケートでは「失敗する」と回答した人の多くが、訪問が成功裏に終わったと知った後は、「成功すると思っていた」と答えたそうです。「そうなると思っていた」「予測可能だった」と。予測していなかったのに、予測していたと思い込む事で、正しい予測への手立てが永遠に閉ざされます。
話は変わるのですが、多様性の時代と言いつつ、就職試験で採用を決める際、ユニークな特徴を示す人はふるいにかけられ落とされる傾向にあるそうです。画一的な基準で能力の高い人だけが採用される。そうなると、多様性はなくなる。
本書では、多様性の欠如により、どのような危険が起こり得るのか、様々な例を挙げて丁寧に説明されています。9•11から軍隊、医療、スポーツ、企業、行政から教育に至るまで。
一言で言えば、多様性のある組織では盲点が少なくなる、という事。前述した後付けバイアスも、人間の心理的盲点であり、多様性により防げる。多角的に物事を見れるからです。
一方で、組織が多様性を排除しがちなのは、効率が悪くなったり管理が複雑になるからです。
盲点を減らすことによる安全をとるか、効率を優先するのか。
例えばスポーツのチームでも、多様性は必要と言われます。ウサイン・ボルトが6人いても、そのリレーチームは勝てないのです。
能力の高い精鋭チームより、多様性のあるチームのほうが、結果を出す場合がある。
何故Googleが失敗し、Amazonが成功したのか。その鍵は心理的安全性にある。
規模が大きくなればなるほど、意外な事に多様性は減少する。例えば学生数3万人のカンザス大学と、千人のベイカー大学で、学生の繋がりに多様性があるのはベイカー大学の方だ。組織が大きければ、自分と近い人間だけで個人的社会を作れるので、結果的に多様性が失われる。
この本を読むと、自分にとって心地よい単一的社会に閉じこもる事の危険を、知る事が出来ます。
多様性が失われ固定化され強固となった組織内では、人は例えば機長に意見するより死ぬ事を選ぶのです。リーダーに意見できないというだけでなく、リーダーは既に知っている筈だから言う必要はない、と思うからです。
米国のこの手の本に多いのですが、本書もみっちり書き込まれており読みやすくはありません。ですが結構面白かったので、宜しければお時間のある時に。