書くしかできない

過ぎていく日々を書き留めています

「運玉」桜井識子さん著

 桜井識子さんは沢山の本を出しておられますが、もしかすると私はその中で、この「運玉」が一番好きかもしれません。 

運玉 誰もが持つ幸運の素 (幻冬舎文庫)

運玉 誰もが持つ幸運の素 (幻冬舎文庫)

 

 

 「運玉」は以前、単行本が出版され、その後絶版になったのですが、「運玉を読みたい」という読者の方が多かった為に、文庫本として再び出版されたという経緯があります。

 この本には、桜井さんが豊臣秀吉さんの霊と話したそのお話が書いてあります。

 これを出版しようと決められた事、その勇気にまず驚きました。今まで、桜井さんは神様との会話をずっと著書に書いてこられました。それだけでも、「眉唾」と言われる危険を常に冒していたわけです。でも、今回の秀吉さんは、神様ではありません。人の霊です。しかも、歴史上の有名人物です。一部の方々から、どれだけ謗られるか分かりません。それでも書かれた。

 秀吉さんは、百姓の身分から天下人にまで登りつめた人です。その人生訓を、ぜひとも伺いたいと、桜井さんは、秀吉さんのおられる京都・豊国廟まで行かれます。最初に秀吉さん(の霊)と会った時、秀吉さんは悲惨な状況でした。死後400年も経つのに、まだ成仏できておらず、暗くて狭い時空の狭間に閉じ込められている状態だったそうです。 

 理由は2つあって、一つは秀吉さんは生前、とても残虐な行為を沢山行った為です。地獄に落ちても仕方ない行いを。でも、同時に秀吉さんは大変信心深く、神社仏閣を作ったり、寄付したり、日常的にも思いやりのある行為を沢山されてきた。そのおかげで、かろうじて地獄に落ちる事は免れた。

 では何故成仏できないかというと、秀吉さんは一旦は神様として祀られたからです。ですがすぐに、家康さんによって、その神社は取り壊されてしまいます。そのせいで、秀吉さんは、人間としての成仏もできず、神様としての道にも進めず、中途半端な状態で、時空の狭間に取り残されてしまったのだそうです。

 しかも生前の数々の残虐行為のせいで、とても暗い、上下左右壁が迫っているような狭い空間に閉じ込められているのだそうです。未来永劫、その状態から抜け出す事はできないのだそうです。

 豊国廟で、そういう秀吉さんの姿を見、話を聞いた桜井さんは、「秀吉さんは、とてもお気の毒でした」と、一冊目の(単行本の)「運玉」に書かれました。

 すると、それを読んだ読者の方々が、続々と豊国廟を訪れ、秀吉さんを慰め、励まされたのだそうです。「秀吉さん、頑張って下さい」「おまんじゅう持って来ました。一緒に食べましょう」「タブレットに今の大阪城の動画を撮って来ました。一緒に観ましょう」「今日は秀吉さんの誕生日ですね、ケーキ持って来ました」「秀吉さん、くじけず頑張って下さい。応援してます」などなど、、、。

 桜井さんは、著書で、「秀吉さんを応援に行ってくれ」等、一言も書いていないのです。ただ「秀吉さんがあまりにも気の毒だった」と書かれただけでした。なのに、読者の方々は、自らの意思で、神様でもないただの人の霊である秀吉さんを慰めに行く為に、時間とお金と体力を使って、豊国廟まで出かけたのです。行っても、霊能力のある桜井さんと違い普通の人達は、秀吉さんと話せるわけでも、姿が見れるわけでもありません。長い階段を登って辿り着くその場所には、ただ石があるだけ。でもそこに秀吉さんが一人孤独におられるという事を、桜井さんの言葉で信じて、何もない空に向かって話しかけ、励ましたのです。

 しかも、秀吉さんはただの霊ですから、神様ではないので、高い波動を頂けるわけでもなく、ましてやご利益が頂けるわけでもありません。秀吉さんを訪ねて行っても、何の見返りもないのです。目に見てわかる手ごたえも、見返りもないその行為を、少なくない読者の方々が行い続けたという事。気の毒な秀吉さんを慰めたい、ただその一心で。

 もうこれだけで私は涙腺が崩壊してしまいました。世の中には本当に優しい人というのは、実は沢山おられるんだなあ、と驚きとともに感動しました。

 そして。今回、「運玉」の文庫本が出るにあたり、桜井さんは再び豊国廟を訪れます。そこにおられた秀吉さんの姿に、私はもう、号泣してしまいました。ネタバレになるのでこれ以上書けませんが、秀吉さんを取り巻く状況は、全く変わられたのです。ぜひ、本を読んで確かめて頂ければと思います。沢山の人の見返りを求めない真心が、秀吉さんの苦しい状況を、一変させたのです。

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 私は、発達障害児を育てているので、どうしても心を強く持たねば、生きてこれませんでした。人には期待しない、分かってもらえなくて当たり前と考える、モノゴトが整っていないのが当たり前と考える、人には何も求めない、そういう風に心をきつく閉ざし、自分にはっぱをかけ続けてきました。

 が。この本を読んで、世の中には本当に優しい人が、こんなにおられるんだ、という事を知りました。言葉で書くと空々しいですが、人は本当はこんなに思いやりがあって、優しい存在なのだ、という事を、この本を読んで感じたのです。

 だからといって、人にベタベタ甘えようとは思わないし、きちんとやってくれない事が当たり前だと考える前提は変わりませんが、どんな人でも、心の奥には、人に優しくしたいという思いやりの心を、しっかりと持っておられるのだと分かりました。

 ちなみに、本来のテーマである運玉についてですが、これは「育てる」ものだそうです。桜井さんは、秀吉さんから、強運の秘密として、運玉の育て方を伺ってこの本を書かれました。単行本より、文庫本のほうが、はるかに分かりやすく書いてあるので、運玉って何?どうやって育てるの?と思われる方は、一読されてみて下さい。

 また、桜井さんは、運玉以外の秀吉さんの強運の秘密も聞かれています。例えば、「人とは腹を割って付き合う事が大事」「嘘は駄目」「与えられた場所で精一杯働く事」などなど。秀吉さんらしい人生訓が沢山書かれていました。信長さんとの関係など、歴史書には出てこない話も色々あって、なるほどそうだったのか、と納得しました。 f:id:oinor-i:20190419091845j:plain

 私も数日前から、運玉を育て始めました。大きくなるのが楽しみです。