書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

「子供が王様」デルフィーヌ・ヴィガン著

今日は、読書記録を書きたいと思います。こちら↓

 これは、我が子をYouTubeで公開する母親の話です。

 SNSネイティブと言われる、こういう子供達(生まれた時から親によって、全世界に顏を知られ、晒され続ける子供達)の未来を、まだ誰も知りません。

 この小説には、その誰も知らないSNSネイティブの子供達の、未来の悲劇が書かれています。

(以下、ネタバレありますので、ご了承下さい。気を付け書きますが、、)

 主人公のメラニーは、2歳違いのサミーとキミ―という兄妹の母親です。「ハッピー・レクレ」というYouTubeチャンネルを管理し、週に3回、子供達を写した動画を作成しています。

 「ハッピー・レクレ」の登録者数は500万人。1回の動画の視聴回数は、各々数百万回。年収は百万ユーロ(1憶4千万円)を超えている。フランスのこの手のYouTube番組としてはトップ。

 子供達は、生まれた時から、日々の生活を母親によって、撮影され続けてきた。また、番組に人気が出始めると、多くの企業からアフィリエイトタイアップが持ち込まれ、山のような商品を使用し、「喜んだり驚いたり楽しんだり」して見せる動画も取り続けられた。

 遊園地に行ったり、ファーストフードに行っては、極端な遊び(好き放題やる、食べたいものだけ食べたいだけ等)をして見せる。

 兄であるサミーは、この生活にうまく対応していたが、妹であるキミーは疲れを見せ始めていた。

 そんなある日、キミ―が誘拐される。

 この小説のメインは、この誘拐事件になりますが、犯人は意外な人物で、誘拐の動機もまた意外なものでした。でも、分かってみると、なるほどと納得できる。

 また、この小説は、誘拐事件が終わった後も続き、サミーとキミーが成人するまでを描いています。

 成人したサミーとキミーは、SNSネイティブとしての問題を多々抱える事になります。あまり詳しく書くとネタバレになりますが、常に誰かに見られているという感覚は、ここまで人を苦しめるのだという事は、身につまされます。彼等はもう、普通の生活は送れなくなっていて、特に、素直に順応していたサミーは、家から一歩も出られない状態になります。

 

 今現在、子供達を顔出しで撮影しているユーチューバーさんは多いです。親自身は顏を隠し、子供達だけ顏を晒すというスタイル。それで大金を稼ぎ、そのお金は親の手元に入ります。

 子供達は、全世界に顏を晒される危険を知りません。そこまで成長する以前に、もうすでに晒されているのです。

 フランスの法律では、テレビ等のマスコミに子供が出演した報酬は、子供本人の銀行口座に送金され、子供本人が成人するまで取り出せず、親は使う事が出来ません。でも、今現在、YouTubeに子供を晒して得た報酬は、親の手元に入っており、YouTubeに関して言えば、無法地帯となっています。

 この小説は、YouTubeに子供を晒す危険について、警笛を鳴らしていると言えます。

 私のレビューでは伝わらないのですが、複数の視点から書かれており、物語の層は厚く、読み応えがありかつ、リアリティーがあります。

 かなり面白い本でした。お勧めしたいと思います。