書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

「ブラックアウト」「オールクリア」コニー・ウィリス著

 タイムトラベル物の中で、私が一番好きなのがコニー・ウィリスのこのシリーズ。  

 

  著者は、1945年米コロラド州デンバー生まれ。ヒューゴー賞ネビュラ賞ローカス賞の三冠を、何度も受賞しているSF界の女王。中でもこのシリーズは、著者の金看板と言えます。SF嫌いな私でも、このシリーズだけは別で。タイムトラベル物で、これを超えるものは無いのではないか、と思うほど。

 あらすじを説明すると、舞台はイギリス・オックスフォード大学の史学部。史学部の学生達は、タイムトラベルを使って「現地調査」に頻繁に出向いている。小説の主な舞台は1940年前後の第二次世界大戦中。その時代の観察が一番面白いと学生に人気なのです。が、学生達が、過去の時代から戻れないトラブルが発生。理由は?対応は?学生達は歴史を変えてしまったのか?

 ざっとこんな感じなのですが、とにかく長い長い長編が4冊です。すれ違い、行き違い、アクシデント、足止め、、、、驚くほどいらいらさせられるエピソードが数珠つなぎ。にも関わらず、何故面白いかと言えば、この膨大なエピソードの全てに意味があり、何かと何かを時たま回収しつつ話が進んでいくからで、最後の最後の大団円で、全てのエピソードが見事にピタリと符合するからです。

 全編通して「学生達が過去で歴史を変えてしまったから、ズレが起こり、現在に戻れなくなったのではないか」という謎が読者の興味を最後まで引っ張るわけですが、ネタバレになってしまいますが、これだけは言うと、そうではなかったのです。学生達が現在に戻れなかったのは、学生達が歴史を変えたからではなかった。全く逆なのです。

 長編4冊延々読んできて、全く逆の線を追ってしまっていた、と気が付いた時の読者の驚愕。そして、作者によって、じゃじゃ~んと全ての事実が明るみに出された時、なんというか、納得というか感動というか、言い知れないカタルシスが沸き上がってきます。

 ほぼ時代は戦時中の記述なので、現在の学生達が、戦時中の暮らしで右往左往する様も、読み応えがあります。自分だったら?と何度も思わされました。

 とにかく長いので読む始めるのに躊躇しますが、飽きずに読める事は間違いありません。最後には感動が待っています。

 著者は他にも多くの小説を世に出しています。同じタイムトラベル物で、「犬は勘定に入れません」も、有名です。