書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

「姑の遺品整理は迷惑です」垣谷美雨著

 

姑の遺品整理は、迷惑です

姑の遺品整理は、迷惑です

  • 作者:垣谷 美雨
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2019/02/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 「姑の遺品整理は迷惑です」垣谷美雨さん。面白い本でした。

 内容は、ただただ「亡くなった姑さんの遺品を整理する」、最初から最後まで、書いてある事はそれだけなのです。なのに、ページをめくる手が止められない。途中で読みやめる事ができない。そして読み終わった後は、じんわり胸が熱くなるという、いやもうビックリな小説です。

 主人公の望登子は、50代で私と同じ。そして、亡くなった姑さんは70代後半で私のお姑さんと同じ。縁起でもないですけど、お姑さんが亡くなったら、こんな感じになるんだなあと、身につまされながら読みました。

 望登子のお姑さんは、3部屋ぐらいから成る、エレベーター無しのアパートの5階で、一人暮らしをしていました。ある日突然、亡くなったので、部屋は生前のまま、何一つ片付いていません。更に、お姑さんモノを捨てない人で、いわゆる「安物買いの銭失い」タイプ。家の中は彼女のモノであふれている。更に、10年以上前に他界したご主人の背広まで捨てずに全部とってある。天袋には、引き出物でもらった重い壺や花瓶が山と押し込まれている。ベランダには、大量の土や植木鉢、重いレンガが積み上げてある。何もかもが重く、50代の望登子には、一度に少ししか持てないので、1階のゴミ捨て場に運ぶのに、階段5階分を登ったり下りたりだと、一日に捨てられる量は微々たるもの。全部捨てようと思ったら、いったいいつ捨て終わるのか。その間、誰も住んでいないアパートの家賃は、当然払わねばなりません。

 更に、冷蔵庫やら重いタンスやらテーブルやら、椅子やらテレビやらテレビ台やらなんやらかんやら、粗大ゴミで捨てなくてはいけないものを数えたら73個ある。その地域の粗大ゴミは、一度に3個づつしか捨てられない決まり。全部捨てようと思ったら、毎週早朝に通ってきてキチキチ捨てたとしても、半年以上かかる。挙句の果てに、隣人が、お姑さんから預かっていたという巨大なウサギを持ってくる。

 更に奇妙なことに。自宅から1時間半の姑のアパートに、着いたらなぜか、炬燵があたたかい。今さっきまで人がいたように。ある時は、捨てようと思っていた冷蔵庫の野菜が消えていたり。開けていた筈の襖が閉まっていたり。鍵を持っているのは自分だけなのに、この部屋に誰かがいる?・・・

 更に、やっと手伝いに来た夫は、思い出があるからあれもこれも捨てるなと言い、全部自宅に送ろうとする。

 いっそ、業者に頼んで処分してもらおうかとも考えた望登子でしたが、それでもどうしても気が進まず、コツコツ一人で遺品を整理していくのです。

 同時進行で、望登子の実母の死に方についても、語られていきます。地方の市長の妻だった実母は、それはそれは自律的な人で、亡くなった時、部屋には何一つ残っていたなかったと。譲るべきものはふさわしい人に譲り、処分すべきものは処分し、きれいさっぱり何一つ残さず、亡くなったのだと。

 対照的な姑と実母の生き方、人間性

 それをひしひしと感じながら、彼女は遺品整理を進めていきます。

 最初のころは、実母をほめたたえ、姑をけなしながら作業していた望登子ですが、しかし、整理を進める中で、少しづつ心境が変わっていくのです。

 この本の読みどころは、彼女のこの心境の変化だと思います。

 読み終わって私も、お姑さんに対する気持ちが、少しだけ変わりました。お姑さんを持つ女性が読むと、きっと面白いと感じる本だと思います。

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