文学賞5冠、著作が世界40ケ国で翻訳されているシーラッハの最新短編集です。彼の本についてはこのブログでは、以前「コリー二事件」をご紹介しました。
「コリー二事件」フェルディナント・フォン・シーラッハ著 - 書くしかできない
今回ご紹介するのは「刑罰」。テーマは「刑罰を科されなかった罪」。この本には、様々な罪が提示されています。確実に、明らかに、そこに罪があることを、読者は知らされます。でも、同時に、その罪は、刑罰を科される事から逃れるのです。何故なのか。
この本は12の短編から成っています。つまり、刑を免れる事ができた12の罪(ケース)について、書かれているわけです。また、シーラッハの著書の多くがそうであるように、この本も事実を基に書かれています。ドイツと日本では、少し裁判の制度が異なりますが、読みづらいという程の弊害はありませんでした。
文体は簡潔で、極力シンプルに作られています。が、内容は相当に重たいです。私は、それぞれの罪が刑を逃れたからくりよりもむしろ、全ての罪が私達の日常のすぐ側にある事に、色々と考えさせられました。
シーラッハの過去の代表作「犯罪」もまた、お勧めしたいです。冬の長い夜に、う~んと唸りながら、読むのに適したミステリーだと思います。