書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

「悪玉伝」朝井まかて著

 

悪玉伝

悪玉伝

 

  いやいやいや、これは面白い。すごい本でした。朝井まかて氏は初めて読んだのですが、一気にファンになりました。

 時は、徳川吉宗が将軍時の江戸時代。舞台は大阪。主人公の木津屋吉兵衛は、大店の当主。頭のきれる気風のいい男前、放蕩癖すら魅力の一部という36才。ほぼ全編、大阪弁なので、大阪弁にアレルギーのある方には向かない小説だけれど、好きな方にはもってこい。前半は、あれこれ事件は起こるものの、その事件すら面白い楽しいと思いながら読み進められます。

 が。

 後半は悲惨。打って変わって暗澹たる内容に激変します。吉兵衛は、あらぬ罪をかけられ江戸で投獄されてしまうのです。獄内の描写が細かくて長い。なんせ半年以上も投獄され続けるのですから。こういうのが苦手な私には本当にきつかったですが、なんとか読み進めました。吉兵衛が投獄された理由は、だんだんと明らかになっていきます。上方商人の意地比べと、幕府のたくらみが混じりあい、吉兵衛が嵌められたという筋書き。

 吉兵衛の運命はどうなるのか?それは読んでみてのお楽しみ、という事で。

 個人的には、吉兵衛の嫁のお瑠璃が最高だと思いました。10才で島原遊郭の禿(かむろ)をしていたのを、吉兵衛が一目ぼれし大金積んで落籍せたという娘で。まあクール。吉兵衛が江戸で投獄された時点でまだ16才。今で言うJK世代。この娘がこの本の最後に、大きな意味を持ってきます。

 この本は、大岡越前守忠相の「辰巳屋一件」という実在した事件をもとに書かれたようです。吉兵衛をして「貫目が違う」と言わせた忠相の人柄も一読の価値あり。

 面白かったです。大阪弁が大丈夫な方はよろしければ。