書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

不自然な自慢

 少し前の、元事務次官の方の事件で、もう1つ書きたい事があります。切り口が違うので、記事を分けました。

 あの殺された息子さんは、ネットで、よく父親の自慢をしていたそうです。それも、純粋な「尊敬しているんだ」的な自慢ではなく、「何かトラブルが起こったら、俺に言ってくれたら、父親のコネで解決してやるから、何でも俺に言えばいいよ」的な自慢。

 これを聞いて、私は思ったのです。ああ、一言で自慢と言っても、害のないものから危険な兆候を含むものまで、あるのだなあ、と。

 害のないもの、というのは、例えば自分自身の自慢とか、子供や配偶者のシンプルな自慢。子供は自分が育てているわけなので、ある程度自分の努力が入っているし、配偶者も自分が選んだ選ばれた、そして今お互い影響しあっているわけなので、ある程度自分の要素が入っている。だから、おかしな言い方ですが、「自慢する権利がある」と感じられます。自慢してもある程度までなら、自然だと思えるのです。

 でも、この、殺された息子さんのように、親の自慢をよく口にする、というのは、何か精神的に大丈夫かな?という感じ、不穏な感じを覚えます。親というのは、自分の努力の要素が、一切入っていない存在だからです。いわゆる「生まれつき持っているラッキーなこと」です。それを自慢するというのは、社会性の低さ、どこかしら歪んだ自己肯定感を感じさせます。

 生まれつきの幸運を自慢するという事を、普通に自己肯定感を持っている人は、しないように思います。例えば、美男美女が、自分の見た目の良さを、しきりに自慢したりはしない。美しい人が、「私は美人」としっちゅう言っていたら、何か変だと感じるでしょう。

 父親の肩書をやたら自慢する事には、それと同じ不穏さを感じます。

 ごく近い例で言えば、私の姉も、父や母の自慢をよくします。父はすでに他界しましたが、生前、姉は父とほぼ疎遠に近かったし、まだ健在の母とも、さして仲が良いわけではありません。むしろ私によく母の悪口を言ってきさえします。なのに姉は他人に対しては、父や母の自慢を頻繁にするのです。父のことは「優しい穏やかな人。私のする事は何でも許してくれた。本当に器の大きい人」。母のことは「私の事を一番理解してくれている。素晴らしい女性」と。姉は、そんな立派な両親の家から、かつて家出した事すらあるのですが、、。もし姉の語る両親賛美が本心であるなら、姉の心の中は、一体どうなっているのか、私には分かりません。

 また、私の知り合いで、離婚した元夫や、元夫の母親(元姑)をやたら自慢する方がおられます。若い頃に結婚され、その結婚生活はわずか1年で、その人は私と同じ年なので、かれこれ30年以上前に終った縁です。元夫や元姑とはその30年以上ずっと会っておらず、もう関係ない人達だと思うのですが、いつも自慢しておられて、聞くたびに落ち着きません。どうにも不穏なものを感じてしまうのです。

 不自然な自慢を繰り返している人は、精神的に何らかの問題を抱えていることの兆候かもしれない、と思います。

 そういう人がいたら、何らかの問題を持っておられるかも、と推察し、対応する事が必要だろうと思います。

 対応する、と言うのは、「そんな自慢はやめて」と伝えるという事ではありません。また、陰で「変な自慢していて愚かな人だ」と馬鹿にする事でもありません。その人が、そういう不自然な自慢をする事で、心の平衡を保っているのだと察するという事です。

 無理やりにでも何か大きく自慢する必要があるという事は、何か同様に大きな劣等感を抱えている、という事だからです。従って、その劣等感を、刺激しない事が一番大切な対応になってきます。そこを不用意に刺激してしまうと、悲劇が起こってしまうのだろうと思います。  

 また。

 自分自身が、不自然な自慢(自分の努力に関係ないたまたまのラッキー事)を、やたらしたいという気持ちになっていたら。実際自慢するかどうかは別として、そういう気持ちに駆られていたら、自分自身が強い劣等感を持っている事を、認識する必要があると思います。

 劣等感というのは、覆す事ができるものと、できないものがあります。

 努力で劣等感を覆す事ができるのであれば、努力すればいいし、努力しても無理な事であれば、スッパリ諦める。自分はその部分において、人より大きく劣っていて、その差は努力では埋まらない、という事を、きちんと認識する。その上で、「でも、少なくともそのせいで、人に迷惑をかけているわけではない」自分や、「それでも、毎日楽しく元気に暮らせている」自分を、強く誉め、認める事が必要だと思います。

 劣等感は、覆す事はできなくても、そうやって克服する事はできるからです。

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