書くしかできない

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子供の自閉傾向をどう克服するか

 私の息子は、自閉的傾向があります。自閉症、と言うほどのレベルではないのですが、「自分の頭の中の理想(自分に都合がいい、こうあるべきという状況)と、現実の状況が食い違う時に、強いストレスを感じる」という傾向があるのです。

 この事を、はっきりと理解できたのは最近で、それまでは、どうして息子はこんな分からず屋なのだろう、と思っていました。とにかく「僕はこうして欲しいから、こうして!!」と言って聞きません。一旦そういうモードに入るとまともに言葉が通じないし、まともな常識も通じなくなってしまいます。分からず屋というか、こちらの言葉が一切通じない息子、自分勝手に自分の要求だけをこちらに認めさせようとする息子に、気が狂いそうになるほど苛々しながら、でもこれが障害児である息子の特性の一つなのだから仕方ないと割り切って、そういう息子を否定する事なく叱る事もなく、ただひたすら受容し続けていました。

 そういう時の「息子の頭の中の理想」というのが、現実離れしていて、非合理的で、とても叶えてやれる事ではなく、ほとんどが「無理だよ」というものばかり。発達障害は認知が歪みがち、というのは事実なようで、「何故そんな事が現実になると思えるの?」という事ばかり。

 例えば、「明日、雨にして!!!」とか、逆に「明日、晴れにして!!!」とか、「お母さん、24時間笑ってて!!!」とか、、、。

 当然、現実には叶えてやれないので「無理だよ」と言うしかないのですが、納得するわけもなく。小さい頃は、癇癪を起こして泣きわめき、泣き疲れるまで何時間でも泣いていました。私は泣き続ける息子の側で、息子をなだめ続けるしかできる事はありませんでした。息子は、自分が苦しんでいるという事を、私に知らしめたいが為に泣いているので、私がその場を外すと、息子はもっと激しく泣き出してしまいます。メソメソした泣き方ではなく、癇癪が破裂した「この苦しさを何とかしろ!」とこちらに要求し続けてくる激しいあてつけがましい泣き方で、受け止めても何もできないのに、受け止め続けなくてはならないのはしんどい事でした。が、私はその息子の苦しさを受け止め続ける役目をさせられていたので、何時間も泣き続ける息子の側から離れる事はできませんでした。

 なんとかして、息子のこの「こだわりと癇癪」を直せないものか、とずっと思っていましたが、解決策がないままで最近まで来ました。

 というのも、この息子の「こだわりと癇癪が、自閉傾向から来ている」という事が私にはハッキリとは分かっていなかったので、「こだわりが強く、こだわりに即さない事が起こると癇癪が破裂する」という風に理解していたからです。なので、息子のこだわりに200%即した生活をめちゃくちゃ気を遣って送っていました。一旦癇癪を起こすと手がつけられなくなるので。腫れものに触るように気を付けて気を付けて生活していました。それでも、息子の非現実的非合理的こだわりが常に叶うわけはなく、一旦癇癪にまで発展すれば、泣きを見守り続けるしかなかった。

 

 この「こだわり(というか自閉傾向)」は、成長に伴い一旦は収まったのですが、思春期の中学生の頃に再発しました。今度は、幼児の頃と違って、言葉を獲得していたので、息子は自分の頭の中の理想を、延々私に話し、私にそれを現実化しろと要求します。無理なものは無理なので、「無理だよ」と言っても、聞きません。何時間も同じ要求を、質問の形で繰り返し繰り返し、私にぶつけてきます。最長6時間、息子の相手をした事もあります。息子は、自分の要求を私にぶつける事が一種の快感になってしまい、延々話し続けても全く疲れませんが、私は疲れ切ります。眠いし、このエンドレスの逃げ場のない質問に答える無意味な作業を、一刻も早く終わらせたい思いにかられ、つい強い口調で「無理だって言ってるでしょ。同じ事を何度も聞かないで」と言ってしまうともうおしまいです。息子は人から強い口調で責められるのが苦手なので、パニックのように大声を出し、私を叩いたり噛んだりします。暴力で私を屈服させ、自分の相手をさせ続けようとするのです。

 これが解決したいきさつは過去記事に書きましたので、宜しければご覧下さい。 

oinor-i.hatenablog.com

  

 で。最近は、息子のこの自閉傾向が、ほとんどなくなったわけです。具体的な経過は上に書いた通りですが、もっと基本的なことがあった、と最近気づきました。発達障害児のしつこさに悩まれている親御さんは少なくないと思うので、何かのヒントになればと思い、書いておきます。

 

 子供の自閉傾向を克服する基本的な方法とは、「子供が頭の中で、勝手に自分に都合のいい理想形を作り上げてしまう前に、それを阻止する事」です。

 自閉傾向のある子供は、放っておくと、「自分に都合のいいめちゃくちゃな理想形」を、どんどん頭の中に作ってしまいます。ウチの息子だと、例えば、出かける日が雨なのが嫌なので、明日出かける予定があるとすると、「明日は晴れ」という理想形を頭の中に勝手に作ってしまいます。天気予報では、完全に雨でも。そして、私に、「明日は晴れだよね!」としつこく確認してくるわけです。予報は雨だから「雨だよ」と私は答えるしかないわけですが、私が「晴れだよ」と答えるまで、息子の確認は終わらない。ということは、延々息子にからめれ続けるのが終わらない、という事になります。

 なので。これを阻止する為には、息子の頭の中の「明日は晴れ」という理想形を壊すしかありません。本当は作り上げてしまう前に、それを阻止するのが一番いいのですが、すでに出来上がってしまったのであれば、壊すしかない。

 天気の話で言えば、私は、中学の理科の天候の勉強から徹底的に息子に教え直しました。その知識はすでに息子の頭の中にあるのですが、知識は知識、理想は理想、と息子は勝手に分けて扱っているので、知識は現実であり、理想は現実にはならない、という事を、徹底的に教えました。見て分かるように、沢山の写真や図を壁に貼り、毎日天気予報を見せて、ネットで雲の動きを見せて、「天気というのはこういう風な仕組みになっている」という事を、息子が噛み締めるまで続けました。

 これが現実である、という事。勝手な理想は現実にはならない、という事を、息子がとことん納得するまで続けました。半年ぐらいかかったと思います。それで、息子は、もう私に「明日は晴れ」とは言わなくなりました。

 ですが半年もかけるのはとても大変なので、本当は、子供が頭の中に勝手な理想形を作る前に、それを阻止するほうが良いのです。私も、息子が天気について変な事を言うな、と感じた時点ですぐに、天気についての徹底したレクチャーを息子にしておけば良かったのです。その時は、いずれ収まるだろうと思っていたので、放っておいて、どんどんエスカレートしてしまって後悔しました。

 子供が、「あれ?変だな。この子、ちょっと変な事を言っているな」と気づいたら、それは子供が頭の中で勝手な理想形を作り始めている証拠なので、間髪いれず、すぐにそれに対処すべきです。放っておいたらどんどんエスカレートして、大変面倒な事になります。

 自閉傾向のある子は、時に、非合理的で認知が歪み、自分勝手な考えが「正しい」という思考を持ちがちです。そういう風に子供が勝手に作り上げた理想形は、現実とは一致しません。子供は強いストレスを感じ、なんとか理想と現実を一致させるように、一番身近な人間(たいていは母親)に、絡みます。キレて叫んだり、暴力をふるう場合もあります。それだけ、子供の抱かえるストレスが強烈だという事、そして子供としては、なんとか母親に自分の思い通りの現実を持ってこさせる為に、キレるしか方法がないという事です。

 こうなったら地獄です。

 なので。大事なのは、子供が頭の中に、勝手な理想形を作り上げる前に、それを正し続ける事です。同時進行で、3つも4つもあると思いますが、とにかく全ての「自分勝手な理想形」が、間違いであるという事を、それが子供の頭の中で固まってしまう前に、崩し続けなくてはいけません。

 自閉傾向の子供(大人もですが)と付き合う時には、この作業が欠かせないと思います。私の経験上、この作業をマメに行っておけば、子供の自閉傾向に悩まされる事は、かなり軽減します。

 ここで大事なのは、「子供の頭の中の理想形を崩す」という事は、「一方的に叱りつける」事ではない、ということです。

 「子供の頭の中の理想形を崩す」ためには、根気よく丁寧に正しい事実を教えていくことが必須です。同じ事を何百回何千回と言わねばならないですし、口で言うだけではなく、ありとあらゆる手段をとる事も必要です。図に書く、写真を見せる、現場に連れていく、他人に話してもらう、等々。子供がその頭の中でとことん理解するまで納得するまで、怒るのではなく、淡々と冷静に説明し続けなくてはいけません。

 子供は、こちらが少しでも曖昧な表現を使うと、その曖昧さを利用して、自分勝手な理屈を作り上げてしまいます。なので、説明する時は、一ミリも曖昧さを作らないように、徹底的に練り上げたものを提示せねばなりません。

 例えば天気を例に挙げれば、「天気予報は外れる事もある」わけです。そうなると、息子は「天気予報は外れることもある。だから、天気予報が雨と言っていても、晴れる」と勝手に決めつけてしまいます。つまり、天気について息子に説明するのに、天気予報に頼るレベルはさっさと諦めるしかないのです。私がどうしたかというと、気象予報士になれるのではないかレベルで、私自身が気候の仕組みについて勉強し、それを息子に教えました。息子が、今日までの天気の流れを読んで、自ら明日の天気を知る事ができるように。そこまでくれば、天気予報がどう言おうと関係なく、自分の頭の中の理想がどうであれ、「明日は雨」という事が息子にも納得できるわけです。

 

 息子が小さい頃、こだわりと癇癪に悩まされていた私に、「それは自閉傾向から来ているのだよ」と教えてやりたいです。「受容し続ける事で、解決することはないよ」と。私は、受容し続けてきてしまったので。

 言葉を理解できない年齢の時は仕方ないですが、言葉で話して通じる年齢になったら、子供の勝手な理想形は、出来上がる前にことごとく潰していかねばいけなかったのです。かわいそうとか、言ってる場合ではなく。冷徹なほど、明確に、現実を子供に教え続けなくてはいけなかったのです。それを今、私は、あの頃の自分に教えてやりたいです。 

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