書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

発達障害の子供にしつこく絡まれるのを、終わりにする方法(追記あり)

 私の息子が、少しでも不安なことがあると、私にしつこく絡んでくる(何時間も同じ質問を繰り返して来たり、確認してきたり、同じ話を繰り返してきたり)、という話を、以前このブログに書きました。

 今は、息子から絡まれる事が、全くなくなりました。ある日を境に、完全にゼロになりました。その過程も、ほぼ同時進行でブログには書いてきたのですが、一度、きちんとまとめておこうと思います。

 というのも、発達障害児にしつこくからまれて苦しんでおられるお母さんが、本当に多いと知ったからです。そして、ある有名なカウンセラーさんが、そういう時のお母さんのとるべき対応は、「きっぱりと徹底的に子供を拒否する事」だと仰っていると聞いて、それは危険過ぎると思ったからです。そのカウンセラーさんは、「母親がきっぱり拒否しさせすればいい」と勧めておられますが、それは危険です。母親が、何の構えもなく準備も考えもなく、ただ拒否すれば解決するのだ、と短絡的に対処してしまうのは危険過ぎます。

 発達障害児の子供に絡まれるのが苦しいのは、拒否できないからです。なぜ拒否できないかと言えば、絡む対象からいきなり拒否されたら、発達障害児は発狂するからです。

 発狂なんて大袈裟な、と思われるかもしれませんが、事実です。だから障害なんです。不適切な表現かもしれませんが、発達障害児が「他者にしつこくからみたい欲」は、薬物中毒者が薬物を欲しがる欲と、強さにおいて同じだと思います。理性など通用せず、通常の思考能力も吹っ飛び、ただただ薬が欲しい(しつこく絡みたい)、もらえなければ(拒否されたら)死ぬ、という気持ちになるからこそ、障害なのです。

 本人の性格とか、理性とか、忍耐力とか、関係ないのです。全ての発達障害児がそうではありませんが、不安感から親に絡むという悪癖を持っている発達障害児は、なぜそうするかといえば、そうしないと不安感から精神が死んでしまうからです。精神の死、すなわち発狂です。自分の精神を死なせない為には、誰かに自分の不安感をぶつけて、ぶつけて、ぶつけ続けて、相手に受け止めてもらい続けることで、自分の不安感を解消しているのです。

 本当は、発達障害児がその悪癖を持ってしまう前に、最初の最初に、きっぱり拒否すれば良かったのですが、残念なことに、そういう指導をしている病院はありません。私も、息子が2才から専門の発達外来に通い始めましたが、病院の指導は「お子さんを受容してあげて下さい。否定しないで下さい」でした。最初は、短時間の絡みでした。同じことを何度も言うけれど、同じ質問も何度もしてくるけれど、まあ、3回とか5回とか、時間にして5分とか。本当はそれでも、応えるのは面倒だったのです。すべての人が、面倒に感じると思います。でも、発達障害児の親の対応として、「子供を受容する」というのがある以上、応えたわけです。5分なら、さして負担にも感じませんし。それが、少しづつ時間がのび、しつこさが増し、我が家の場合は、5時間も6時間も、になったわけです。

 こうなると親も死にそうになります。応えるのがしんど過ぎる。また、同時に、子供側にしてみたら、すでにクセになっていますから、クセというか習慣になってしまっていますから、絶対に止められない。にっちもさっちもいかない。

・・・・・・・・・・・

 私と同じく、多くのお母さん達が、同じような状況で苦しまれていると知りましたので、我が家の解決方法をまとめて書いておきます。必要な方に届きますように、と願います。

①子供の担当医に、徹底的に相談した。

 ノートに現在の詳しい状況を書いてまとめ、医師に話しました。通常は3分診察の医師だが、私の苦境が通じたのか、20分程時間を割いてくれました。この時の診察内容は、下記の記事に書いています。

http://oinor-i.hatenablog.com/entry/2017/08/01/165537

エビリファイの服用を息子に相談した。

 医師から処方された薬です。服用目的は、息子の過敏さを和らげ、少し鈍感にさせることで、息子が日常的に感じている不安感やストレスを減らす目的です。が、息子は二回飲んだだけで、服用をやめました。飲んでみたものの、たいした効果は感じなかったせいと、薬がやめられなくなるのが怖いから、です。私も薬についてはどちらかというと飲まなくていけるなら、それにこしたことはない、と思っているので、同意しました。

③母に絡むのをやめるように、息子を説得した(一回目)。

 下記のように説得しました。

 自分が不安だからといって、他人にしつこく絡む事を続けていると、時間も対象もどんどんエスカレートしていくと、ドクターから聞いた。確かに、最初は数分だったものが、今は何時間にも及んでいるし、お母さんだけにやっていたものが、今は親戚の人にも及んでいる。エスカレートがすすむと、もう自分の力ではやめられなくなる。今ならまだ間に合う。今が、自力でやめられるギリギリの地点だと思う。ものすごく大変だと思うけれど、協力するから、一緒に頑張ってみよう。

④私の説得では、完全には納得しなかった息子が、偶然見たテレビ映像で、納得に至った。

 経緯は、下記の記事に書いています。

http://oinor-i.hatenablog.com/entry/2017/08/03/103453

⑤ここから先の経緯は、記事に書いていないので、新しく書きます。

 「母親に絡んではいけない」と心底納得はした息子でしたが、彼にとって、私に絡む悪癖を辞める事は、おそろしく苦しい事でした。それでも、やめねばならない、と息子は苦しみながらもやめようと努力しました。

 母親に絡みたい、でも絡んではいけない、息子の精神はその二手に分かれ、限界まで苦しんでいました。苦しんだ末に息子が私に言った言葉は、

「僕、精神病院に入院したい」でした。

 息子は、息子自身の力では、もう、悪癖を我慢することは不可能だと知ったのです。息子は目をぐりぐりと見開いて、せっぱつまった表情でした。その表情を見て、その言葉を聞いて、私も腹をくくりました。

「分かった。あなたがそう思うなら、そうしよう。今日は土曜だし、明日は日曜だから、月曜朝イチでドクターに連絡をとって、なんとか診察予約を入れてもらおう。ドクターに相談して、入院手続きを取ってもらおう」私は息子にそう言いました。

 すると、息子が激しく抵抗し出しました。今すぐ入院したい、と言うのです。もう一刻も我慢できない、と言うのです。私は息子に、ドクターの診察を受けないと、入院はできないという事を、事を分けて説明しましたが、テンパっている息子の耳には入りません。自分はもう、1ミリも我慢できない。苦しすぎる。今すぐ病院に行く、と言いはるのです。

 私はもう困り果てました。ちなみにこの会話をしてる時は、息子は薬を服用している時でした。だから、薬を飲ませて様子を見る、という手も使えません。夫も帰宅していません。私一人で息子と対峙せねばなりません。私の対応が一つ間違っただけで、息子の精神を繋ぎとめている理性の糸が切れそうでした。息子は、すぐに病院に行けない事に焦れて、今にも暴れ出しそうでした。そして、手が出ました。

 私には暴力はふるわない、とあれほど約束したのに、そして、一度約束したら、どんな事があっても絶対に守る発達障害特性を持つ息子が、自分との約束を破って、私をバチンと叩いたのです。

 思わず手が出た、という感じでした。私をバチンと叩いた後、息子自信が驚いていました。そして、次の手が、今にも出そうでした。息子自身、それを止める事はできないようでした。息子の精神は、ほぼ死にかかっていました。理性は0.001%も残っていないようでした。そしてそれも、もう消えそうでした。

 助けてくれる人は誰もいません。家には私しかいません。ドクターは薬を出してくれましたが、それも効いていません。私がなんとかしなくてはいけません。全て、私が責任をとらなくてはいけません。

 全てが私の責任。

 そう思った時、私の肚は決まりました。私は、再び私を叩こうと挙げた息子の手を握りました。そして、「〇〇君、お母さんと一緒に死のう。もう、無理だわ。お母さん、もう無理だ。〇〇君となんとか生きていこうと16年間頑張ってきたけれど、もう無理だと思う。〇〇君はこのままだと、いつか必ず人を傷つけてしまうよ。それだけは駄目だ。でも、お母さんには、もうそれを止める力はないと分かった。もう私達は死ぬしかないよ。人を傷つけてしまう前に、死のう」

 息子は、止まりました。そして、きょとんとした顔で「どうやって?」と聞きました。

 私は、以前から、死ぬ方法については考えていたので、「マンションの屋上から一緒に飛び降りよう。一瞬で死ねるから」と答えました。淡々としていたと思います。この時、私は、本当に死ぬつもりでした。我が身の力の限界を悟ってしまい、まだ死ぬ力のあるうちに死ぬのが一番だと思っていたからです。

 息子は、止まりました。大人しくなりました。私は大人しくなった息子の手を取って、立ち上がろうとしました。「さあ、行こう。決心がにぶらないうちに」と。

 と、途端に息子が抵抗し始めました「イヤだ、死にたくない。僕は死にたくない」

 私は、息子を諭しました。「でも、あなたは、自分の力で、自分を制御できないでしょう。そんな危険な人間は、生きてはいられないのよ。仕方ないのよ。あなた一人で死なせるわけにはいかないから、お母さんも一緒に死ぬから、一緒に行こう」

 でも、息子は立ち上がりません。そして、「大丈夫、僕、我慢できる。僕、大丈夫、我慢できるから」と、言い出したのです。

 「本当に?」と私は半信半疑で聞きました。「さっきは、我慢できないって言ってたでしょう。もう1ミリも我慢できないから、すぐに入院するって言ってたでしょう」

 息子は、「さっきのは、そう言ったら、お母さんが、僕が絡むのを許してくれるかと思っていっただけ。本当に入院したかったわけじゃない。お母さんを、驚かしたかっただけ。お母さんに、前みたいに僕が絡んでも、許してもらいたかったから言っただけ」と言いました。

 それからどんな話しをしたのかは忘れましたが、我慢できない我慢できないと大騒ぎしていたのが嘘のように、息子はすっかり落ち着きました。

 私は正直、息子が、私を驚かす目的で「入院したい」と嘘をついた事に、とても驚きました。息子は嘘がつけないという発達障害特性を持っているからです。私は、この時初めて、息子が嘘をついたのを見たのです。それぐらい、「不安感から母親に絡みたい」という欲求は、激しく強力だったという事だと思います。本来の発達障害特性を凌駕するぐらい、その欲求は強力だったのだと思うのです。先に、薬物中毒者が薬物を欲しがるのと同じだと書きましたが、それぐらい強力な欲求を、少々の説得や何かで、抑えこめる筈がなかったのです。 

 あれから二週間以上たちますが、息子が私に絡んでくる事はありません。普通に会話していて、うっかり同じ事を2回言いそうになった時ですら、「あ、これは違うから、もう言わないから」とアタフタするぐらい、繰り返し話もしません。しつこい質問どころか、私に質問する時は、「質問していい?一回だけしかしないから」と必ず確認するようになりました。

 私のストレスは激減し、免疫力が回復したせいか、持病化していた膀胱炎が治りました。また、驚いたことに、息子自身が、とてもラクそうなのです。夜もすぐ眠れるようになったそうで、「楽しい夢を見るようになった」と言います。私に絡まなくなることで、息子の精神が落ち着いたのだと思います。私にしつこく絡んでいた時、絡む時間が長くなればなるほど、息子のテンションはどんどん高くなっていました。それがなくなり、日々、平常心で過ごせるようになって、夜も落ち着いて眠れるようになったのだと思います。息子は、「絡みたい」中毒から、無事に抜け出せそうです。

 ・・・・・・・・

 何がよかったのか、私には分かりません。一つひとつ、その時の最善を考え、親子で真剣にもがき続ける事で、何かの化学反応が起こり、最終的には、ショック療法のような形で、解決したのだと思います。息子は真剣に、命の危機を感じたのだろうと思います。それが、彼の強力な欲求(母親に絡みたいという)を消したのだと思います。私には、息子を脅す意識は全くありませんでした。あの時、私は、とても落ち着いていたと思います。平常心で、もう死ぬしかないな、と諦めていました。これを言って、息子の気持ちを変えさせようというような計算は、一切ありませんでした。

 それぞれの親子で、それぞれの解決方法があると思います。ここに書いたのは、我が家の場合です。これが他のご家庭に通用するのかどうかは分かりません。

 根本的な話をすれば、もし可能であれば、子供が母親に絡み始めた、その最初の最初に、きっぱり拒否すれば良いのです。が、その時期は、おそらく0歳児、もしくは1歳児の頃でしょうから、赤ん坊の、どの欲求が後に母親へのしつこい絡みに発展する芽なのか、新米母が見抜くのは至難の業です。かといって、赤ん坊の欲求の全てを拒否したら、赤ん坊の精神に二次障害が発生します。勢い、多くの欲求を受容して育てることになり、気付いた時には、しつこい絡みが悪癖となって定着しているわけです。そして、一旦習慣となってしまったものは、発達障害特性として、止めさせることはとても困難なのです。

 いや、厳密に言えば、「母親に絡みたい」衝動が生まれてしまうその原因を取り省けば、「母親に絡みたい」衝動は生まれない筈なのです。その原因とは、発達障害児が、健常者の社会で生きることで生じる様々な「生きづらさ」の蓄積の事です。ストレス、という言い方をしたり、不安感、という言い方をしたりもします。これをゼロにしてしまえばいい。原因が消えれば、衝動は生じません。

 でも、発達障害者のその「生きづらさ」を、ゼロにする事は不可能です。なぜならば、この社会は、圧倒的大多数の健常者に、フィットするように作られているからです。少数派である発達障害者には、フィットしないのです。尚且つ、発達障害者の五感はとてつもなく過敏で、フィットしない、という事が大変な苦痛になるように、生まれついているのです。

 それでも、「生きづらさ」を少しでも減らすことは、無意味ではありません。息子の担当医も、「学校の先生に、できるだけ理解してもらえるように話す事は、とても大切だ。何か具体的に対応してもらわなくても、ただ彼が困っている苦しんでいる現状いっぱいいっぱいである、という事を、理解してもらうだけで、随分変わるはずだ。息子さんへのねぎらいの言葉かけが増えるだろうし、今以上のプレッシャーを息子さんにかけてくる事を防げる効果もある。また、先生が理解してくれたら、それを周囲の先生方にも広げていってもらえるかもしれず、それが学校のシステムを変えたり、社会のシステムを変えて行く事に繋がるかもしれない。彼が困っているという事を、関係者に伝え続ける事が、彼の生きづらさを軽減することに繋がる」と、毎回仰います。

 でも親としては、なかなか周囲には言いづらいんですよね。「息子はこんなに苦しんでいるんです」とは、、。そう言われた人は、責められているように感じるだろうし、何かをせねばならない、と、責任を押し付けられたような不快感も感じるだろうと思うからです。「じゃあ、どうしたらいいんですか?彼の為に何をしてあげたらいいんですか?」と親(私)に聞けば、「いや何もしなくてもいい、ただ苦しんでいるという事だけ、理解してくれたら」と返答がくるわけで、、。とても不快だろうと思います。だから私は今までは、学校の先生や周囲の人には、「〇〇で困っているので、△△してください」と具体的な対応方法まで提案できる時だけ、息子の苦しさを伝えることにしていました。逆に言えば、解決方法が見つからない時や、見つかっても学校側の都合でそれは不可能な時は、先生には何も言いませんでした。言っても仕方ない、と思っていたからです。

 でも、最近、私は考え方を変えました。具体的な解決方法が見つからなくても、とりあえず、困っているという状況だけは、先生に伝えておくようにしています。それが、担任の先生の大きな負担になる事は承知の上で。それが、息子の生きづらさを減らす一助になるなら、必要悪だと割り切りました。

 こうやって考え得る限りの手をやり尽くしても、息子の生きづらさをゼロにはできません。せいぜい100が90に減るぐらいです。それでもしないよりはマシなのです。

・・・・・・・・・・・・・・

 「発達障害児にしつこく絡まれるのを、終わりにする方法」は、

①子供の生きづらさを減らす努力をし続ける事(生きづらさをゼロにできれば、子供の悪癖は消える)、

②周囲の人間が、子供が生きづらさを抱えて生きていることを理解し、ねぎらい続けること、

③子供自身が悪癖の危険性を深く理解し、やめる努力をすること、

の3つだと思います。言う間でもなく、大事なのは①と②です。①と②なしには、③は不可能です。

 最初に書いたカウンセラーさんご推奨の、「親が拒否すればいい」的な対応が間違いだというのは、こういう理由からです。親が拒否する、だけでは、①も②もクリアできていません。③も、子供に危険性を理解させる部分が手落ちです。「親が拒否する」というのは、ただただ子供に我慢を強いているだけの事になります。これは解決ではなく、問題の先送りなので問題は水面下で膨らみ続け、いつか必ず決壊します。だから、私は、「親が拒否すればいい」的な対応は、危険過ぎると感じます。

 いずれにしても、信頼できる専門医と相談しながら、必要なら薬も処方してもらった上で、慎重に、でも徹底して妥協なく取り組むのが、遠回りなようで、確実な方法だと思います。


追記:あれから時間がたった今(2021年)は、少し絡みが再発していますが、短時間で終わり、長引きません。