書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

一億円のお年玉

 今日はなんか悲壮ぶった事を書きます。少し前の話なのですが。

 息子が年末年始、義実家に帰った時に、親戚の方からお年玉を頂いたそうなのです。義実家から我が家に帰って来た息子が「○○さんから、一億円もらったよ」と、頂いたポチ袋を私に持ってきました。

 見ると、数字の部分をうまく重ねて0が8つ並ぶように一万円札が折り畳まれており、「100000000」に見えるようになっていました。

 息子はその、折り畳まれた一万円札を私に見せて、「ほら、一億円だよ」と。

 最初、冗談を言っているのかと思ったのですが、息子の顔を見ると、真面目なのです。本当に、これが一億円だと思っている。

 「○○さんがね、一億円入っているよ、って言って、くれた。ほら、0を数えたら一億だよね、これ」と息子。

 

 私はもう、唖然としてしまって、どうしようかと思いました。

 

 息子は、一人で買い物もできるし、カジュアルなお店なら一人で入って食事もできるし、近場なら一人で旅行もできます。支払いも出来ます。お金というものについて、よく理解しています。複雑な数式や化学の反応式もすらすら解きますし、英単語や古文の文法等は一目で覚える。なのに、折り畳まれた一万円を見て、「一億円だよ」と言われたら、素直に信じてしまう、、。人を疑うという事が出来ない嘘が分からない、また視覚優勢で見たものをそのまま取りいれてしまう、発達障害特性です。見たものを瞬時に覚えてしまう弊害として、見たものを分析し疑うという過程をすっ飛ばしてしまうのだと思われます。

 

 私は、すぐにその一万円札を伸ばして、「ほら、これ、折り畳まれてただけで、本当は一万円だよ」と見せてやると、「あ、ほんとだ」と息子。

 「本当にこれが一億円だと思ってたの?」と聞くと、「本当に思ってた。でも、今見たら、一万円だと分かった」と。 

 

 私はゾッとした後、これは放っておいてはいけないと思い、一つひとつ息子に説明しました。「お札で一番大きい単位は一万円だから、一枚のお札で一億円というのはあり得ないよね」。

「そう言われたらそうだ。でも、もらった時は分からなかった」と息子。

 

 「そうか。分からなかったのか。じゃあ、考えてみて。今まで一億円お年玉もらった事ある?」

「ない」

「そうだよね。ないよね。一番沢山もらった時で、数万円だよね」

「うん」

「なのに、いきなり一億円くれたら、おかしいと思わなかった?」

「思ったけど、沢山くれたんだなって思った」

「そっか。でもね、これからは、いつもと違う事があったら、まず『おかしいな』と思ってみて。相手が何と言おうと」

「分かった」

「いつもと違う事や、なんか引っかかる事、初めての事があったら、どういう事であろうと、丸ごと信じるんじゃなく、まずは一回『おかしいな』と思ってみて。そして、自己判断せず、とにかくお母さんに言って」

「分かった」

「最終的には、自分でちゃんと判断できるようになるのが目標だけど、その為には、『おかしい』という事に自分で気づけるようにならないといけない。それはもう、一つひとつのケースで、お母さんが教えていくから、一つひとつ覚えて」

「分かった」

「今回のこのお年玉は、ただの冗談で悪気があるものじゃないけど、世の中には悪気あってあなたを騙そうとする人が沢山いるの。だから騙されないように、いつもと違う事、なんか引っかかる事、初めての事があったら、必ずお母さんに知らせて。メールでも電話でもいいから、すぐに。あなたが行動するのは、お母さんに知らせた後にして」

「分かった」

 

 これで大丈夫とは思えないのですが、とにかくこれだけは徹底して息子に言い聞かせ、息子の机の前の壁にも、同じ内容の事を書いて貼っておきました。

 

 息子がそのお年玉をもらった時は、夫もいたそうで「お父さんは何って言ってたの?」と聞くと、「一億円もらってよかったね」と言ってたそうです。

 その日帰って来た夫に尋ねたら、夫は「そうなんだよ。一億円くれたんだよ。わはは」と笑っていました。私はもう、腹がたつというか呆れてしまって、「あの子は本当に一億もらったと思ってたよ。どうしてその場でそれが冗談だと教えてあげてくれなかったの?」と聞くと、夫は笑って答えません。私が神経質な女で、問題でもない事を問題にして愚かだと思っているようでした。

 夫はまったく事の重大性を分かっていません。やはりこの人は、分かっているようで、分かっていない。発達障害の怖さについて、真に理解はできていない。学ぼうとも知ろうともしない。背筋が寒くなりました。

 私一人でやらねばならない。息子を、私一人で、なんとか社会で生きていけるようにしてやらねばならない。改めて歯を食いしばる思いでした。一人で大騒ぎして、と、笑われるかもしれません。息子を育てていると、こういう事は本当によくあることで、そのたびに、正しい対処方法が何かも分からないまま、でも放置する事はできず、一人で必死でやって来たのですが、神経質すぎると笑われる事も多かったです。

 でも、息子にとって必要な事なのです。誰かがコツコツ教えてやらないと息子には分からないのです。息子がこういう事が分からないという事が、健常者には理解できない。だから私が神経質だと笑われるのですが、私が笑われても、息子が社会で生きていけるようになるなら、やるしかないのです。

 なんか、悲壮ぶってすみません。終わります。

 

f:id:oinor-i:20200110092031j:plain