書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

悩みを消すには感情に蓋をすればいい、というアドバイス。

 あるカウンセラーさんが、ブログで、クライアントさんに向けて、こんなアドバイスをされていました。

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 クライアントさんは私と同年代の50代で、すでに成人した子供がいるのだけれど、ひどい子育てをしてしまったせいで、子供に恨まれているのだそうです。「いつまでも子供が私のことを許してくれない」と。

 その方に対するカウンセラーさんのアドバイスをまとめるとこんな感じ。 

 

親だって未熟です。親だって単なる生身の人間です。親だって必死だった。子供自身も完璧な人間じゃないのに、親に完璧を求めるのは筋違い。子供に許してもらう必要はないのです。堂々としてればいい

 つまり、親だって人間だから失敗するのは当たり前。子供に対してそうやって開き直りなさい、と。それがそのカウンセラーさんのアドバイスでした。

 う~ん。盛大な違和感。

 たしかに親も人間だから、子育てで失敗するのは当たり前だと思います。でも、失敗したら、「親だって人間なんだから完璧な子育ては無理」と開き直るのではなく、まず誠心誠意、子供に謝るのが先じゃないのかな。

 なぜ、謝らない?

 なぜ、謝らずに開き直る事を勧めるの?

 

 って。答えは分かっていて。クライアントさんにとって、謝るより、開き直るほうがラクだからでしょうね。「お子さんに謝りなさい」と言っても、クライアントさんはなんだかんだ自分勝手な理屈を並べて謝らないでしょう。でも、「親だって人間なんだから、失敗して当然。気にしないで開き直っていいのよ」と言えば、クライアントさんはラクになる。嬉しくなる。この人のカウンセリングを受けて良かった、このカウンセラーさん大好き、と思う。人気が出る。また来てくれる。だから、「謝りなさい」ではなく「開き直りなさい」になるのだろうな。

 親が謝らなくたって、いずれ子供は親を見限って、恨むのも面倒になって、どうでもいいと思うようになります。20代ならまだ無理かもしれないけれど、30代40代と年をとっていくにつれて、親にされた事をひきずる事自体、自分によくないと思って忘れてくれます。少なくとも、親を責めて来なくなる。

 だから、親が謝らなくても、いつかは子供から責められなくなる日が来ます。そういう意味では、開き直って時間稼ぎしてればいい、というアドバイスも、一見正しいように見えます。

 でも。私は違うと思うな。

 

 謝るという事は、「何が正しくて、何が間違いなのか」を、をハッキリさせる、という事です。逆に謝らなければ、子供は「何が正しくて何が間違いなのか」を区別せずに生きていく事になります。モラルがめちゃくちゃなまま、良心的行為と自己中行為の良し悪しが分からないまま、生きていく事になります。だって、親だって自己中で許されたのなら自分だっていいはずだ、ズルしてもいいし、何してもいい、謝る必要はない、開き直ってればいいんだ、だって親もそうだから。そういう考えで生きていく事になります。

 それは、とても不幸な生き方だと私は思います。親が子供にちゃんと謝らない家では、子供は不幸な生き方を踏襲していくことになります。

 ちなみに、そのカウンセラーさんは、クライアントさんに「あなた自身が、あなたの親に対して恨みに思う事があっても、忘れてあげなさい。そしたら、あなたのお子さんも、あなたを恨むのをやめてくれるから」と言っておられました。

 ???

 ずぶずぶだなあ。

 いい事はいい。悪い事は悪い。ときちんとするのではなく「悪い事を、してもされても気にしてはいけません」というアドバイス。善も悪もごちゃごちゃ。善を善と言うこと、悪を悪と言うことを、否定する。だって人間だもの、という理屈で「悪は不快である」という、人本来の正しい感覚を、抑え込む。蓋をする。

 

 でも私は思いますが、悪は悪ですよ。どこまでいっても悪は悪です。そこは絶対に覆らないと思います。開き直ったところで、人間だから仕方ないと言い訳したところで、そこは変わらないです。悪は悪です。悪をすればどんどん人生が悪い方向に進みます。人間だから悪をしたって構わない、という理屈は、明らかにおかしいです。

 人から悪い事をされたら、たとえそれが親からだとしても、「嫌だ」と感じるし、人に悪い事をしたら、たとえそれが子供に対してでも「悪かったなあ」と恥じる。それが、人間本来の自然な感情だと思います。

 でも、そのカウンセラーさんは、その人本来の自然な感情を「持つな」とアドバイスされているわけです。「親からされた悪い事を忘れなさい。子供にしてしまった悪い事も忘れなさい」。それは、人としての自然な感情に、蓋をしなさい、という事。

 確かに、悩みというのは感情があるから生まれるのであって、感情に蓋をしてしまえば、悩みは消えます。でも、感情に蓋が出来るのは、ほんの一時期。そんな永久には無理です。このクライアントさんも、一時期は感情に蓋する事でラクになるでしょうが、しばらくしたら、また感情が吹き出してきて、苦しくなり、カウンセリングに出かけるでしょう。エンドレスです。

 件のカウンセラーさんのアドバイスは、無責任を通り越して、罪深いと私は思いましたが、カウンセラーさんご自身は全く気付いていなくて、とても自信満々。カウンセリング料金は2時間5万円。このお金は、いったいクライアントさんにとって、どういう意味を持つのだろうか。ひとときの気休めに払うには、あまりにも高額だと私は思いました。

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  もし私がこのクライアントさんだったら、きちんと子供に頭を下げ謝るし、一生かけて子供にとって役にたつサポートを具体的にし続けると思います。申し訳なかった、という気持ちを、言葉と行動で、子供に示し続けると思います。それでも子供から責め続けられるかもしれないけれど、私に出来る限りの力で、子供に詫びをし続けると思います。

     私だって一生懸命だったんだとか、そんな自己弁護などせずに。

 自分の感情に蓋せずに、自分の心を安らかにするには、そうするしかないと思います。子供が忘れてくれるから謝らなくてもいい、というのはおかしな話で、きっと死ぬ時後悔するんじゃないかな。謝っておけばよかったなあと悔いる気がします。