書くしかできない

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発達障害児の身体バランス機能の悪さ

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 発達障害児は、身体のバランス調整機能が悪い場合が多いです。早い話が、極端に不器用なのです。私の息子で言えば、幼稚園の頃でも、靴下を一人で履けない(つま先を入れても上にひっぱり上げられない)、ブランコに乗れない、ボールが受け取れない投げられない、上着が一人で脱げない着れない掛けられない、、、等々、数えきれないほどの「出来ない」がありました。彼の「出来ない事」は、同年齢の子供なら当然出来る事、もしくは、1~2歳の子でも出来る事が多かったです。

 私は、息子が発達障害だと2歳半で知りましたので、息子に関係する人には「この子は発達障害なので、〇〇と△△が出来ません。出来ないのはこの子がやる気がないせいでも、練習不足なせいでもありません。障害故なので、申し訳ないですが、必要な場合は手助けしてやって下さい。長い目で見守ってやって下さい」と、伝え続けてきました。理解して下さる人もいたし、下さらない人もいました。それはもう、仕方のない事です。

 例えば、理解して下さらない人のお一人に、幼稚園の担任の先生がいました。彼女は息子に出来ない事が多いのは、親である私が過保護で、息子に何一つさせてやらないからだ、と思っておられました。息子の障害について何度説明しても、その場では頷くものの実際には納得されておらず、お腹の中では「親が過保護なせい」というお考えを、変えて下さらない。障害について説明すればするほど、「親の言い訳」ととられているのが分かりました。

 子供には強制的に何でもやらせ、出来るまでやらせれば必ず出来るようになる、というのが、この先生の信念なようでした。これは大きくなってから息子から聞いたのですが、その先生は、上着が脱げない息子を、一人だけ別の部屋に連れて行き、脱げるまでここに居なさい、と、その部屋に閉じ込めたそうです。そんな事をされても、息子が上着が脱げるようになるはずはないので、一定期間繰り返し閉じこめられたそうですが、ある時期に先生も諦めたそうです。ただ、その先生は、息子を毎日一定時間別部屋に1人で閉じ込めているという事を、私には言っていなかった。息子は当時、言葉がしゃべれなかったので、息子の口から私に漏れる事はないと高をくくっていたのだと思います。先生は、息子の記憶力の良さを知らないので。息子は、高校生の今でも、幼稚園で閉じ込められた日時と時間を、全て言えます。その時、先生が何を言ったか、どうしたか、も全て言えます。私がそれを息子から聞いたのは小学生の頃ですが、私はそれを息子から聞いても、改めてその先生に苦情を言いに行く気にはなれませんでした。理解して下さらない人は、何をどう説明しても理解して下さらないだろうと思ったからです。

 上に貼った記事を読んで、世の中は少しづつ変わっていくのだなあと、感慨深いものがあります。

 発達障害児の不器用さは、その子のせいではない、という事を、世の中が知ってくれるだけでも、子供達はとても救われると思います。

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 ちなみに。息子の不器用さを少しでも克服する為に、私がやっていた事を書いておきます。出来るだけ毎日やりました。

〇息子と向かい合いに立ち、ボールを投げ、受け取らせ、また息子からも投げさせる。最初は手の届くほど近い距離から始め、少しづつ二人の距離を開けていく。

〇ボール投げのサッカーバージョン。二人の間でボールを蹴り合う。

〇ブランコ、滑り台、ジャングルジムなど、公園の遊具で遊ばせる。握力も低く、バランスも悪いので、常につきっきりで見守らないと危ない。

〇両手でボールを持った状態で、階段を上らせる(上りのみ。ボールがあると下りは危ない)。いずれにしても危ないので後ろからついて守る。

〇家庭用トランポリンを購入し、毎日数を数えながら飛ばせる。10回1クール。

〇縄跳びの練習。縄跳びは本当に難しく、最初の数年は、縄をぐるりと回すだけしかできなかった。後ろからぐるりと回して、前から降ろす事ができるようになったら、地面に落ちた状態で静止している縄をピョンと飛び越える練習。飛び越えられるようになったら、また後ろからぐるりと回して前に下ろす。そんな感じ。何年も練習したが、普通にスムーズに飛べるようにはなれなかった。ただ縄跳びというものに慣れさせた事は大きく、小中の運動会の大縄跳びは、ちゃんと飛べていた。

〇体操教室や水泳教室に入れた。水泳教室は小学校6年まで続けて、4泳法できるようになった。ただ、進みはおそろしく遅かったが、、、。でもとにかく、泳げるようになった事は大きい。今でも水泳は好きなようだ。

〇小1で、コマ無し自転車の練習をさせたが、素人の私が教えたのではどうしても乗れるようにならなかったため、自転車教室に入れた。普通は1回で乗れるようになるものなのだが、息子には無理だった。それでも数回通ったら、乗れるようになった。それからは自転車大好きっ子になって、いつも乗っていた。今でも自転車で一人で遠くまで行くのが気分転換になっているようだ。

〇幼稚園の頃、アイロンビーズや特殊な塗り絵、紙粘土などで、できるだけ遊ばせるようにした。鉛筆も最初はしっかり握れなかったが、特殊な塗り絵が気に入って、だんだん握れるようになっていった。

〇本人が望む限り、散歩に出かけ、長時間散歩もさせた。小さいわりにはよく歩き、歩く事が好きで、足がとても強くなった。今でも息子は全身のバランス機能は悪いが、足が強い(持久力がある)事で、運動機能がかなり補填されているように思う。

 

 まだまだ色々やった気がしますが、ちょっと忘れてしまいました。とにかく思いつく事は何でもやってみました。最初は出来ないし、なかなか出来るようにはならなかったですが、全くやらせなかったのと、出来ないなりに少しでもやらせてきたのとでは、結果に雲泥の差が出たと思います。

 たとえば、上に書いた例で言えば、縄跳びは何年もほぼ毎日させましたが、結局飛べるようにはなっていません。でも、運動会の大縄跳びに怖がらず参加できたし、足をひっかけてみんなに迷惑をかける事にもなりませんでした。一人で縄を回して飛ぶ縄跳びは出来なくても、誰かが縄を回してくれれば飛べるぐらいの所までは上達していたのだと思います。運動機能の悪い発達障害児の場合、やはり、練習させておいてやらないと、自然に一人でできるようにはならないと思います。 

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 上の記事では、こういう運動機能の悪い発達障害児をどう支援すればいいのか、学校関係者が対応に苦慮している、と書いています。困るのは、体育、美術、音楽、図工技術などのいわゆる副教科ですね。

 息子の通った小中学校では、こういう科目で、特に何も特別なことは、してもらっていなかったと思います。ただ先生方は、「人より時間がかかる事を最初から分かっていて、せかさず待つ」「最初の所は手取り足取り丁寧に教える」「居残りでマンツーマンで教える」などを、自然にやって下さっていました。これらの対応で、なんとか息子もやれましたし、出来ないから苛められるという事もありませんでした。学校でして頂ける対応は、これが限界だと思いますし、これでも先生方には、十分大きな負担だと思います。

 やはり、発達障害児の身体バランス機能を、根本から良くしていく為の訓練は、学校ではなく、家庭や療育の場でやるのが、現実的だろうと私は思います。ただ、繰り返しになりますが、「出来ないのは本人のやる気の無さのせいではない」という事を、先生方が分かって下さるという事が、とても大切で、先生方がそれを分かって下さっていれば、他の生徒も自ずと理解してくれます。具体的に何かをしてくれなくても、ただ理解してくれている、という事が、とても大きな進展だと思います。