書くしかできない

過ぎていく日々を書き留めています

「彼女の恐喝」藤田宜永著

 何故この本を読む事にしたのか、記憶にないのですが。誰かに勧められたのか、何かで紹介されていたのか。。いずれにしても、勧めてくれた人に大感謝しました。すごく面白かった。私は面白いと思った本しか紹介しないのですが、この本はその中でもトップ5に入ります。 

彼女の恐喝

彼女の恐喝

 

  表紙のデザインは男性っぽい硬い感じですが、中身は女性の心にピタッとくる繊細で淡々と静かな描写です。ですが、筋書きが天才的に面白い。

 以下、若干ネタバレ。

 大学4回生の主人公・圭子は、母子家庭で仕送りがない為、奨学金を借り、六本木でホステスをしながら、なんとか暮らしている。編集者を目指しているが就職は決まらない。ホステスの仕事は心身ともに過酷だが辞める事は経済的に不可能。そんな中、国枝という客が、殺人のあったマンションから深夜出てくるのを目撃する。圭子は、国枝を恐喝しようと思いつく。

 こんな出だしです。ネタバレ完全覚悟で書きますが、結論から言って、国枝は殺人者では無かったのですが、圭子の恐喝に応じて、二千万円払うのです(国枝は恐喝者が圭子だとは知らない)。真犯人は追って逮捕され、報道を見た圭子は訳が分からなくなります。一方、国枝と圭子は、この恐喝沙汰がある前から少しづつ惹かれあっていて、恐喝沙汰があったにも関わらず、関係を深めていくのです。

 何故、国枝は犯人でもないのに、金を払ったのか。

 何故圭子は、自分が恐喝したその相手に、惹かれていったのか。

 この小説には、様々な「何故?」が順序よく配置されており、それに引っ張られるようにして一気に読めてしまいます。しかもミステリーには珍しく、しっとりした心情描写が秀逸で、上質な恋愛小説を読んでいるようにも感じます。

 読後、心の中に、なんとも言えない味わい、しいて言えば諦念というか、なるほど、というか、つらいけどそうなんだよねやっぱり、というか、そういう思いが広がります。また、圭子の今後の人生も見てみたい、と思われる事でしょう(続編はないようですが、、)。そういう魅力的な主人公の小説なのです。若い方だけでなく、私ぐらいの年齢の女性にも、楽しめる小説だと思います。

 

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