書くしかできない

発達障害、神社仏閣、読書記録、日々のつぶやきを主に書いています。

「殺し屋」ローレンス・ブロック著

 連日の酷暑で、外出する気も失せている今日この頃。家の中で時間を潰すのに、ミステリー(の読書)が最適だとお考えの方は、おられるでしょうか。そういう方にお勧めなのが、今日書こうと思っている、ローレンス・ブロックの「殺し屋」シリーズです。 

殺し屋 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

殺し屋 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

 

  主人公ケラーは、殺し屋です。仕事として「殺し」を請け負い、見も知らぬ他人を殺しに行きます。彼は、自分の仕事に(当然ながら)疑問を感じています。早い話が、やりたくない。ならば、何故、殺し屋なんかやる事になったのか、そのへんは本書を読んで頂ければ分かるのですが、要は、「なりゆき」です。

 ケラーはあまり良い生育環境になかった為、自分の将来について真剣に考えたりする余裕もなく育ち、気が付いたら殺し屋になっていた。そして、かなりそれを上手くこなしている。殺しの依頼は時に曖昧で、複雑で、不可能な依頼ばかりな中、ケラーはその曖昧さ複雑さ不可能さをごくシンプルな方法で、解決してしまう。そういう才能があるのです。でも、そういう日々で、一方で殺し屋稼業に対する激しい抵抗もまた、感じている。

 「殺し屋」シリーズは、多分4巻出ていると思うのですが、第一巻であるこの「殺し屋」では、まだケラーの殺し屋稼業に対する抵抗感は、深くは描かれていません。それよりは、この仕事をケラーがいかに上手くやりこなしているのか、そのお手並みが中心に描かれています。が、第二巻、第三巻、と進むにつれて、抵抗感のほうに重点が置かれ始め、「これが終わったら引退しよう」と決めた最後の依頼で、ケラーは窮地に追い込まれます(第三巻の「殺し屋 最後の仕事」です)。ケラーは、殺してもいない殺人の犯人に仕立て上げられ、被害者が大物政治家であった為に、全米で追われる身となるのです。

 第一巻の「殺し屋」も面白かったですが、私は個人的にはこの第三巻の「殺し屋 最後の仕事」も相当面白いと思いました。

 もちろん、他の2冊も面白いのですが、その面白さというのは、多分、こういう所。

 ケラーは、いつの間にか不本意な仕事をする事になっていて、不本意だけれども、仕事である以上、抵抗を感じながらも、毎回きちんとやり遂げるのです。不本意な環境で日々頑張らざるを得ない人って、結構多いと思います。私も、生活の全てとは言えないですが、どこか不本意な面はあり、「おかしいな」と思いながら、それでも、「これは私の仕事だから」と抵抗を感じながらも、毎回きちんとやり遂げている。だから、ケラーにとても共感するのです。

 また、著者ローレンス・ブロックの、少し冷めた描写力にも、私は魅力を感じます。

 例えば、第四巻「殺し屋ケラーの帰郷」から、少し文章を書きぬいてみます。

・・・・・(抜粋開始)・・・・・

 階段で地下に降りると、ロッカールームには男が二人いた。いずれも50代で、ビジネススーツに着替えながら、起業合併のオファーについて話し合っていた。「こういうことにはいつもおそろしく時間がかかる」と一人が言っていた。「もっとも、近頃はなんでもそうだが。この前も、ガールフレンドと一緒にいて気づいたんだ、自分が関係を終わらせたくてしかたなくなってることに。愉しみが欲しかったわけじゃなくて、愉しい思い出が欲しかったことに」

 もう一人もうなずいて言った。「私もこんなふうに思うことがある。自分が望んでいるのは、人生のあらゆることを、未決箱から既決箱に移し替えることだけなんじゃないかって」

・・・・・・(抜粋終わり)・・・・・

 筋とは何の関係もない部分なのですが、なんとなく面白いなーと思ったので抜粋してみました。著者の文章の雰囲気が分かって頂けたら幸いです。

 この第四巻の終わりで、ケラーは意外な結末を迎えます。え、そう来る?という感じ。そして、同時に、深く納得、という感じ。もしかしたら、更に続巻が出るかもしれません。出るとしたら、とても楽しみです。

 

殺しのパレード (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

殺しのパレード (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

 

   

殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

 

 

  暑い午後、アイスティーなど飲みながら、読んでみられるのに最適な一冊かと思います。と書いていて、今知ったのですが(子供に言われた)、今週末から少し涼しくなるのですね。涼しいといっても30度前後だそうですが。それでも、随分ラクになりますね。少し外出もできるかも。良かったです(^_^)。週末まであそ少し、なんとか無事に乗り切りましょう。。。