書くしかできない

過ぎていく日々を書き留めています

「ゲームの王国」小川哲さん

 小川哲さんの「ゲームの王国」を読みました。とんでもなく面白い本でした。

 一読すると、ポルポト前後のカンボジアの近代歴史を庶民の立場で書いたもの、という印象なのですが、よくよく読むと、この本、SFなのです。そう言われてみれば、歴史に合わない部分があったなあと思うのですが、あまりにもリアリティーがあり過ぎて、架空のお話とはとても思えない。

 作家は生粋の日本人。私は最初てっきり、カンボジア人が書いたのだと思っていました。。しかもこの小川哲さんという作家さん、お若い。まだ31才。人生経験もそうなさそうなお若い男性(しかも東大)が、ここまで深く物事を考えられるものなのか、と衝撃を受けました。私は、若い人の小説を読むと、上手いと評判の方ほど、あざとさが鼻についてしまうのですが、この本には、全くあざとさを感じませんでした。最初、カンボジア人が自分の半生を書いた私小説かと思っていたぐらいですから。でも、下巻あたりから日本人っぽさが出てきます。それはそれで面白い。下巻には日本人も登場します。

 でも主人公は、あくまでも、 生まれた瞬間に孤児になった少女と、農家に生まれた天才少年の二人。彼らは、ポルポトが支配する超自由のない・超貧乏国家カンボジアで、自分達の信念を追及する闘いに挑みます。少年はそれを「ゲームだ」と言う。相手が作ったルールの中で、いかに勝ち抜くか。どこか発達障害を疑わせる弱々しいその少年が、何百万人もの罪のない人間が理不尽にどんどん殺されていく中で、頭脳だけを頼りに生き残り、そして勝ち抜いていく様。

 その「様」が、アメリカ映画のような「圧巻」ではなく、「哲学」なのが、この本の読み応えとなっています。

 「人生をゲームと考え、戦略をたてて生きるべき」という考え方は巷に溢れていますが、この本が言いたいのはそういう事ではありません。ゲームとは何か、ルールとは何か、そこまで踏み込んで考え抜く事にしか、ゲームに対する勝利はない、それを実際に見せてくれるのです。目の前に。証拠として。

 今年、読んで良かった本の一冊です。

 

ゲームの王国 上

ゲームの王国 上

 

 

 

ゲームの王国 下

ゲームの王国 下