書くしかできない

発達障害の息子、夫、私。過ぎていく日々を書き留めています

「フォークロアの鍵」川瀬七緒さん

 川瀬七緒さんの「フォークロアの鍵」を読みました。認知症老人ばかり6人が入居するグループホームが舞台です。そこに、民族学の聞き取りを研究テーマにしている大学院生である主人公の女性が入り、老人達から過去の記憶を聞き出していきます。相手が認知症患者だけに、どこからどこまでが信用できるのか、突拍子もない問題行動やこだわりや思い込みが日常茶飯事に起こり、主人公の研究は一筋縄ではいきません。

 そんな中、主人公は、脱走癖のある一人の老女の「おろんくち」という言葉に、引き寄せられていきます。「おろんくち」とは何なのか?何故この老女は夕陽を見ると脱走するのか、その謎を追いかけ始めます。

 複筋として、登校拒否の高校生のストーリーも入っていて、この高校生が「おろんくち」を聞いた事があり、主人公とともに行動し始めます。

 老人ホームが舞台となる小説や映画が、最近増えてきたように感じます。どれも、ほのぼのとしたあたたかさや人情を描いている傾向にあると感じます。この本も例外ではなく、ホーム職員の苦労や、何もわかっていないのに分かっていると思い込んでいるカウンセラーに対する苦々しさや、老人達の人間味が、この小説の味になっています。そこにミステリーの要素も入って来て、読者を飽きさせません。

 私も、ほのぼのしているなー、ミステリー風で面白いなー、と油断して読み進めていたのですがですが、、、、。80%ほど読んだ時点で、この小説の雰囲気が突如一変します。ほのぼの小説から、ホラー小説へと。

 怖いです。後半20%は完全にホラーです。特に最後の5%には、思いもかけない恐怖が待っています。敏感な方だと、その夜は眠れなくなるのではないでしょうか。

 ですが、後半のホラーは、紛れもなく、ほのぼのとした前半部分と地続きで、何らの矛盾もなく繋がっているのです。なかなかやるなー、と思って作者を調べたら、過去に乱歩賞をとっておられました。結末にしっかりとした信念のある、読み応えのある小説でした。