書くしかできない

子供、夫、私。過ぎていく日々を書き留めています

新しい冷蔵庫とキッチンの「気」

 冷蔵庫を買い替えた。今まで使っていたものも、別段壊れてはいなかったのだが、長く使っていたことと、最近コンプレッサー起動時の音が大きくなってきていた事とで、寿命がきた気配がしていたのだ。夏に壊れられでもしたら厄介なので、壊れる前に交換した。

 冷蔵庫の搬入というのは、面倒なものだと思う。重いものだから運搬が大変だし、古いものを持って帰ってもらう為に前もって要領よく準備しておく事もできない。早々と庫内の食品を出してしまうと常温に戻って傷むから、交換直前にやらねばならない。運送会社さんから、「今から行きます」の連絡を貰ってからおもむろに、食品出し作業を始めたが、出し終える前に、運送会社さんが着いてしまう。焦る。マンションの来客用の駐車場にトラックを入れてもらう為、駐車場のゲートの鍵を開けに走る。そして走って戻る。

 それからなんとか食品を全て出し終え、古い冷蔵庫をキッチンから出してもらう。狭い家だから、ドアも廊下も冷蔵庫の幅ギリギリだ。筋骨逞しい運送会社さんが二人がかりで、見事に運びさってくれた後、冷蔵庫の置いてあった場所を見ると、数センチもの濃い灰色の埃が、びっしりと積もっていた。掃除機で吸ったら一瞬で目詰まりをおこしそうな量だ。ビニール手袋をはめた手で、端からすくってはゴミ箱に捨てて行ったが、雪だるまでも作れそうなほど固い埃。キッチンの油が溶け込んでいるのだろう。冷蔵庫背面の壁にも埃がびっしり。全くもう、よくもまあこんな埃だらけのキッチンで料理ができてものだ、と自分を叱りながら、仕上げの水拭きをしていると、それが終わらないうちに新しい冷蔵庫が運ばれて来る。「ちょっと待って下さい」とお願いして、必死で掃除を仕上げる。せわしない。

 うまく新しい冷蔵庫が据えつけられ、運送会社さんがお帰りになった後、汗を拭く間もなく出してあった食品を、再び冷蔵庫内に戻し入れていく。運送会社さんから「冷蔵庫が冷え切るまでに3時間かかるので、その間は何も入れないで下さい」と注意されていたが、そういうわけにはいかない。出しておいたら腐るじゃないか、と躊躇なく食品を入れてしまう。すぐに入れてしまっても問題なかったと思う。結局、アイスクリーム一つ溶けずに済んだので。

 全てを終えて改めてキッチンに入ると、冷蔵庫を新しくしただけなのに、キッチンの空気が変わっているのに気付いた。何がどう違うのか具体的には言えないのだが、キッチンに立っているのが気持ちいいのだ。清々しい。とても気分がいい。その日の夕食の準備はも後片付けも、全く疲れなかった。その場の「気」というのは、これほどこちらの気分を左右するのだなあと改めて感じた。埃が無くなったのが良かったのか、それとも新品の品が良い気を出しているのか。昨年電子レンジや電気ポット等、小物家電を買い替えた時は、こんなに気分は変わらなかった。やはり冷蔵庫というのは特別なのかもしれない。入れ替えは相当面倒だったが。新しい冷蔵庫は音も全くしない。ファンの回る音はもとより、コンプレッサーの起動音すらしない。ちなみに460ℓの三菱冷蔵庫だ。ウチは三菱冷蔵庫ファンなので。以前のものもとても長持ちした。

 ちなみに、冷蔵庫到着日、夫は半日会社を休んだ。私一人では受け入れが大変だろうと、面倒な入れ替え作業を手伝ってくれるとの事で。しかしながら、夫が手伝ってくれたのは、結局、新しい冷蔵庫の温度設定作業(フリールームのようなものがあり、冷蔵庫にもフリーザーにもできるらしい)だけだった。搬入の為に、冷蔵庫まわりの棚を外したり、運び出す作業も私がやったし、大急ぎで庫内食品を出し入れしたのも私。掃除したのも私。この人は一体何の為に会社を休んだのだろう?と不思議になったが、まあ、手伝ってやろうという気持ちだけ、有難く受け取った。

 ちなみに、約束の配送時間は、8時から12時だったのだが、結局運送会社さんが来られたのは12時5分前だった。午後から出社予定の夫は、「遅い、遅すぎる」と文句を言っていたが、12時まで、という約束で、12時までに来たのだから、文句を言う筋合いではない。待っている時間、私は子供の問題集を集中してやっていたので時間の経過は気にならなかったが、夫はイライラと動き回っていた。30分に一度くらい私の部屋に来て「まだか、まだか」と言い、私に運送会社さんに電話をさせたりした。「12時までには行きます」というザックリした答えしかもらえなかったが、当たり前だ。自分で電話すればいいのに。配送を待つ時間というのは、こうやってべたっと家に縛り付けられるものだが、慣れていない夫にはしんどい事だったのだと思う。配達待ちなら今日一日の話だが、子供が小さい頃は、365日24時間、子供にべたっと縛り付けられていたのだ。縛り付けられている事が仕事であって、何らかの金銭的見返りがあれば空しくもないのだ。何も生みださないという空しさ、何かに縛り付けられて自由に身動きとれない閉塞感を、夫も少し分かってくれたかもしれない。

 何はともあれ、新しい冷蔵庫のおかげで、キッチンが明るくなって嬉しい。