書くしかできない

発達障害の息子、夫、私。過ぎていく日々を書き留めています

ちょっと気が重い遺伝

 前回書いたように、私は、初めての事が大抵うまく出来ないくせに、初めての時が一番楽しいという不可思議な性格を持っている。このせいで、昔から、異様に念入りに段取りを考える癖がついたし、時間より早め早めに動く癖もある。

 例えば、働いていた時は、就業時間の1時間前には出社していた。就業時刻は8時半で、通勤時間が1時間程だったので、6時過ぎには家を出ていた。起きるのは5時台だ。でもその時間だと、通勤電車も空いていて、乗換もあったが、最初から最後までゆったり座っていけたのだ。早朝に会社に着けば、電話も鳴らないので仕事もはかどる。周囲にも、「早く来る人→真面目な人」という印象を与え、仕事上で得をする事が多かった。早め早めに動きたい、段取りよく動きたい、という私の癖が出た結果だ。

 最近この癖が、息子にもしっかり遺伝している事に気が付いた。

 息子の高校は郊外にあるので、普通の時間に登校しても通学電車はさほど混んではいない。だが彼は、登校時刻の30分以上前には学校に着く段取りで家を出る。当然電車はガラ空きで、毎朝、窓の景色等眺めながらゆったり座って登校するらしい。早く着いて学校で何をしているのかというと、毎朝一番でやる小テストの暗記をしている。彼は発達障害の特性か、記憶が得意で覚えるのも早いし覚えたら忘れない。大体15分ぐらいで覚えてしまって、後は校内をブラブラしているらしい。この段取りが彼には快適らしい。

 ところで早めに家を出る為に、彼は5時台に起きるので、私も5時台に起きる事になる。朝ご飯やらお弁当やら作らねばならないので。6時過ぎに起きれば間に合うのに~!と、いつも腹立たしく思っていたのだが、早め早めに動きたがるのは私も同じだったなあと思えば、諦めるしかない。妙なところが遺伝するものだ。

 その「妙な遺伝」のせいで、もう一つ困った事があって、私を悩ませている。余所の高校もそうかもしれないが、息子の高校は、学校指定の問題集を生徒に配布する際、解答を生徒に渡さないのだ。解答を渡してしまうと、答えを移して宿題をしたフリをする生徒が出るからだそうだ。ただ、その方針も、教科の先生によって異なり、中には最初から解答を下さる先生もいるし、定期テストの直前に下さる先生もいる。そして、全く下さらない先生もいる。正直、この方針に対しては私は、高校の考え方に同意はできない。真面目な生徒の方向を見るより、不真面目な(答えを丸写しする)生徒の方向を見る、という方針が、あまり好きにはなれないからだ。こういう方針をとっているから、あの高校は今一つ上のランクに行けないのだろうと、八つ当たり気味に思ってしまう。

 どの教科の問題集には解答があるのかないのか、把握するのも面倒くさいのだが、こういう「徹底していない状況」は、息子にはとても負担になる。もともと嘘がつけない、ズルができない発達障害児なので、「答えを見て宿題をする」という事が想像できない。だから私が、「そういう生徒もいるのよ」と教えて納得させるのがまず一苦労。その上で、何故解答をくれる先生と、くれない先生がいるのか、というややこしい状況にも、彼に納得できる説明をせねばならない。

 何故息子が前以て解答が欲しいのかというと、学校で勉強したその日に、復習してしまいたいからだ。ためておいて一気にやる、というのが嫌いなので、都度都度問題集で復習したいのだ(高校では、ためておいて一気に宿題に出し、授業中に答え合わせをする方法をとっている)。でも、解答がないと、宿題が出る前には、問題集がやれない。彼が得意な科目だと、解答が無くてもまあこれが正解だろうという答えを書いて自分で納得できるようなのだが、苦手な国語系の問題は、解答が無いとお手上げなのだ。それで、先日、彼はとうとう古文の先生に「家で復習するのに解答が欲しい」と言ってみたらしい。彼としては相当に勇気を振り絞った行動だったと思う。その勇気が通じたのか、先生が「そうか。ではこのクラスだけ、前もって解答を配ってやろう」と言ってくれたそうだ。

 だが、問題はこの後だ。この古文の先生、次の授業になっても、解答を配ってくれなかったのだ。息子は「先生、解答は?」ともう一度、勇気を振り絞って尋ねてみたらしい。すると先生「あ、そうだったな。今度持ってくるよ」と言って、また次の授業にも持ってきてくれなかったそうだ。

 ここに来て、息子が私に相談してきた。息子としては、3回も同じ事を先生に頼みに行く(催促しに行く)のは、苦痛らしい。気持ちは分かる。彼なら(というか、私も)一度約束した事は、必ず守ろうと努力するからだ。忘れっぱなしで放ったらかし、という事はしない性分なのだ。だから息子は、古文の先生のやり方が理解できないのだ。でも現実問題、世の中にはわりとそのへん、ルーズに適当にやられる方も多いし、また、そういうルーズさに対して、さして腹を立てない人も多い。それも後天的に学んだので、息子には分かっているのだが、分かっていても、相当にストレスがかかっているようなので、なんとかしてやらねばならない。

 私が学校に電話するしかないのだろうな、と今は思っている。担任を通して古文の先生に伝えてもらうか、古文の先生と直接話すか。どちらが適切なのだろう。ちなみに高校には、息子が発達障害だという事は伝えてあるので、こういう時、若干電話しやすい。つまり、「ちゃんとしてくれない古文の先生が悪い」という方向ではなく、「四角四面に動きたがるウチの息子が悪いのですが」という方向で話しができるからだ。息子は何も悪くないのだけれども、先生を悪者にして息子が得をする事は万に一つもない。先生に対して不愉快な要件の電話をする場合、こちらに非があるという建前を作れるのは、安全弁だと思っている。

 それでもやっぱり、来週早々学校に電話せねば、と思うと少しだけ気が重い。