書くしかできない

子供、夫、私。過ぎていく日々を書き留めています

生花の香り

 雨が長く降った。寒かったし、桜も相当こたえただろうと思う。やっと晴れた昨日は、文字通り洗われたように鮮やかな姿を見せてくれたが、中には風に揺れて散ってしまう木もあった。ハラハラと儚く。そして、それはそれで美しい。ちょっと銀行へ、ちょっと買い物に、と家を出るたびに、ついつい公園の桜に見とれてしまい、佇んでしまい、ベンチに座り込んでしまい、気づくと容易に一時間たっていたりする。花に見とれて一時間。桜の力はおそろしい。子供の学校が始まったので、私が時間に追われなくなったせいかもしれない。朝7時過ぎに子供を見送ったら、夕方5時か6時まで全て私一人の自由時間になったので。とてものんびり暮らせている。学校の有難さを噛みしめる。学校なんてあって当たり前と思ってしまうが、世界には学校など無いか、あっても機能していない国が山のようにある。学校がなければ私など、花に見とれる余裕は無いだろう。

 どうして花が好きなのか、分からない。何の役にも立たないのに、見ているだけで良い。そこに在ってくれるだけで良い。ベランダには常に、カランコエを咲かせている。玄関には切り花を欠かさない。生花を飾るようになったのはいつからだろうか。結婚する前にはそういう習慣は無かったから、結婚後のことだと思う。いつの間にか、家の中に生花が無いと何か足りない気持ちになるようになった。

 家に飾る花は香りのないものを好む人も多いが、私はむしろ、強い香りの花を選んでいる。薔薇やストックなど。白いストックを束にして飾ると、玄関だけでなく家中に香りが漂う。家中だけでなく、家の外にも、玄関の扉を開ける前から香りが漂い出ていて、家に帰って来たという気持ちになる。瑞々しく、濃厚で、重たいけれど爽やかでもあり、甘く、不思議と鼻腔をくすぐるスパイシーな匂い。

 アロマや香水の香りは、時間がたてば飽きてしまう。飽きる前に慣れて香っている事を感じられなくなってしまう。化学的な合成品ではなく生の花から抽出したナチュラルなものであっても、アロマや香水の香りと、生花の香りは全く違うのだ。生花の香りには、飽きる事も慣れる事もない。何故なら、生花の香りは、同じ花であっても、刻々と変わっていくからだ。買ってきたての瑞々しい香りと、朽ちていく寸前の退廃的な香りは、全く異なる。生花は生きているからこそ、刻々とその形も香りも、変えていくのだ。

 家にいて、ふと「あ、いい香り」と気づく。その時の幸福感は、ちょっと他では探せない、本能に根差した何かだと思う。

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