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書くしかできない

子供、夫、私。過ぎていく日々を書き留めています

「ブラックアウト」「オールクリア」コニー・ウィルス

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舞台は英国のオックスフォード大学史学部。時代はパラレルワールドの近未来である2060年。タイムトラベルがアカデミックな用途のみに可能になっている。アカデミック用途というのは、史学部の学生が生きた歴史を学ぶ為にのみ、過去に行けるというもの。

 「降下(過去に行く事)」は、何年何月何日何時何分に、緯度経度何度の位置に、と細かく指定され、また戻って来る日時も場所も細かく指定されていてる。過去での滞在期間は数日~数週間という短いもので、歴史を変えないように詳細な行動規定が決められている。それでも現代人が過去に行くのならどうしたって歴史を変えてしまうのではないか、という疑問には、「歴史自らが変えられる事を拒む力を持っているので、大丈夫だ」という説が優勢。そんな中、トラブルが起こる。4人の学生が、降下はできたが、現在に戻って来れなくなってしまったのだ。

 物語は、2060年の大学史学部と、4人の学生が降下した各々の時代と場所とで、入れ替わり立ち代わり語られ、「何故、戻って来れなくなったのか」という最大の疑問を求めて進む。ややこしいのは、一人の学生が、何度も過去に降下しているが、自分が行った時代に再び自分が存在する事はできない事だ。例えば、1940年12月1日に過去行った事のある学生が、1939年のロンドンに再び行って、すぐに戻ってくるはずが、戻れなくなる。そのまま1939年で生き続ける事はできるが、1940年12月1日には、歴史の「力」で消去される事が分かっているわけだ。12月1日までになんとしてでも現代に戻らねばならない。そういうタイムリミット事情が各々の学生にある。

 著者コニー・ウィルスは、こういうややこしい状況を書かせたら天下一品だと思う。すれ違い、届かないメッセージ、思い出せそうで思い出せないもどかしさ、やきもき。次から次へのどんでん返し。けれど最大の謎はほとんど解決せず、話をひっぱるだけひっぱって、なんと、600ページもの厚さの本を4冊(ブラックアウト上下巻、オールクリア上下巻)も書きつづけるという超人技。

 この小説の魅力は優れたSFである事だけではなく、「災厄に対してどう向き合うのか」という事を語りつくしている点だと思う。災厄に向き合う事をテーマにしたSF小説には「火星」があった。「火星」は昨年「オデッセイ」という名前で映画化されたが、目指すところはあれと共通していると感じた。ものすごく長いし、ものすごくもどかしい思いをしながら読まなくてはならないが、それでも、最後に十分なカタストロフィーを得られる。

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