書くしかできない

発達障害の息子、夫、私。過ぎていく日々を書き留めています

「ガール・オン・ザ・トレイン」ポーラ・ホーキンズ

(ネタバレあります)

ロンドン郊外に住む、若い夫婦やカップルを主役にしたミステリー。
この本は、著者の処女作だそうで、今時のロンドンの空気感たっぷり。

「「ガール・オン...」の画像検索結果
イギリスのロンドン郊外族のミステリーと言えば、ルース・レンデルがいますけど、
レンデルの現代版と言った感じで、
人物の心情風景がねちっこく秀逸で、かつ、ミステリーの運びが上手い。

私、初めて読む作家さんの本は、
どんなに前評判が良い本でも、自分として面白いと感じれるかどうか不安で、
読み始めてしばらくは、
「この本、本当に面白いのかな。
ちゃんと考えて書いてくれてるのかな。
途中で失速して、最後は支離滅裂な、いい加減なオチで終わるんじゃないだろうな」
と、疑心暗鬼で読み始める事が多いのですが、
この本は、もう、出だしから面白かったし、
そういう不安は一切なかった。

文章が安定していて、「これは間違いない」という確信のもとに読めて、
最期まで、間違いなかったです。
これは読んで損のないミステリーだと思います。

簡単な筋書きを書いておくと。

*****

郊外から毎日通勤電車でロンドンに通う女性が主人公。
彼女は、毎日、車窓から、線路沿いの「或る家」を見るのが好きだった。
ほぼ毎日、その家の前で、電車が赤信号で止まるので、じっくり見れたというのもあるし、

その家には、若い夫婦が住んでいて、彼女はその二人に憧れに近いものを感じ、
電車で前を通るたびに、勝手に頭の中で、その夫婦像を作り上げていた。

ある日、その夫婦の奥さんのほうが、テラスで別の男性と抱き合っているのを、見てしまう。
そして日を置かず、その奥さんが、失踪したというニュースが携帯ニュースで流れる。
と同時に、主人公の女性は、実は、3ヶ月前に失職しているのに、意味なく毎日通勤電車に乗っていた、という事が分かる。
と同時に、主人公の女性は、実は、5年前に離婚していて、その家のすぐ近くに離婚する前は住んでいた事が分かる。
と同時に、その離婚前の家には、今現在、元夫と新しい奥さんと赤ちゃんが住んでいる事が分かる。
と同時に、離婚原因が、主人公の女性が不妊による情緒不安定からアルコール中毒に陥った事だと分かる。
と同時に、元夫の家に、失踪した女性が、ベビーシッターで通っていた事が分かる。
と同時に、失踪した女性は、以前自分の赤ちゃんを不注意から死なせてしまって、それを悩み、心療内科に通っていた事が分かる。
と同時に、失踪した女性は、心療内科の担当医と、浮気していた事が分かる。
と同時に、、、、、

*****

まだまだ延々、次々と、新しい事実が明るみに出て、ページをめくる手が追い付きません。
しかもこれ、
主人公の女性と、失踪した女性と、元夫の新しい奥さんの3人が、
かわるがわる一人称で語るという形式で書かれているので、
実際のところ、何が事実で、何が嘘(一人称で語っている人の思い込みや誤解)なのか、
判別が難しい。

しかも、主人公の女性はアル中で、小説の最初からほぼ最後まで、ずっと飲み続けの状態なので、
記憶も飛び飛びだし、書いている事もおかしいし、
読んでいるほうは、イライラするんですが、それも作者の計算だという事も分かる。

でも、そういうアル中の主人公の女性のキャラクターが、
心根の優しい、まっすぐな女性なんですね。
これが、この小説の面白さのキモだと思います。
アル中だし、めちゃくちゃな女性なんですけど、「人として正しい」と思わせるものがあって、
それが、最後まで一気に読ませる原動力になっているのだと思います。