書くしかできない

発達障害の息子、夫、私。過ぎていく日々を書き留めています

「心はあなたのもとに」村上龍さん

村上龍さんの「心はあなたのもとに」。恋愛小説です。結構長いです(554ページあります)が一気に読めます(面白いということ)。村上龍さんの小説は苦手で、あまり読まないのですが、これは村上さんらしからぬ、エグイ性描写の少ない恋愛小説。1型糖尿病を患っている33歳の、貧しく美しいバツイチ独身女性と、45歳の裕福な既婚男性との、恋愛話です。男は投資の優秀なビジネスマンで、ビジネスの話もたっぷり出てきます。それだけ読んでも面白いです。少し時代遅れではありますが(少し前の小説なので)。

 でも、やはりメインは恋愛話。ありきたりな不倫話では全然ない。女は高級風俗嬢として男と出会い、付き合うようになり、その後銀座ホステスになり、栄養士の専門学校生になります。その間、ずっと、女の闘病は平行して続いていきます。何度も低インスリン症状で昏倒し、入院、原因不明の吐き気、、と。1型糖尿病の大変さ辛さ孤独が、しんしんと伝わってきます。男は女の生活費も入院費も学費も全部出す。それでも男は女に対し、罪悪感を持ってしまう。もっと関わってあげられるのではないか、苦しみを癒してあげられるのではないか。

でも一方で、例えば女の病状が悪化して入院したと聞くと、男は「ホッと」する。入院すれば、自宅で倒れているのではないかと、心配しなくてすむから。そうやって、恋人の入院を喜んでしまう自分にも、罪悪感を感じる男。けれど付き合いが2年を過ぎる頃には、男は女にそれほど会いたくなくなる。女を心配する事もなくなる。また、その事に、罪悪感を感じる事もなくなる。

女は男を慕い続け、遠慮がちにメールを送り続ける。会いたいけれど、会いたいと言って嫌われたくない、矛盾した気持ち。悪化する体調。不安。そして男も心を病みます。仕事は順調でも多忙を極めていて、家族もあり。

 暗いと言えば暗いお話だけど、とにかく、村上龍さんの腕が凄すぎて、本を読んでいると、目の前に男女がいるかのように錯覚します。リアル、リアル。最後のクライマックスは、油断していた頃にいきなり来ます。「え」と、なります。そして、泣きます。胸を突かれて泣く、というのは、こういう事なんだなあと思います恋愛の辛さ、必死さ、に、胸がかきむしられる。恋愛にどっぷり浸かって泣きたい人におすすめの本だと思います